第18回日本カナダ経済人会議(日本側団長 江尻宏一郎氏)/5月15〜16日

変革期にある日加両国経済と今後の日加経済関係


日本カナダ経済委員会(委員長 江尻宏一郎氏)は、さる5月15日、16日の両日、日本側 232人、カナダ側 245人の参加を得て、ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリア市において第18回会議を開催した。全体会議において、変革期の日加経済や日加フォーラム2000のフォローアップ報告をテーマに議論を行なった他、石炭、ウラン・原子力、鉱産物、農水産・食品、林産物、観光、金融、自動車・同部品および情報通信の各(小)分科会において活発な討論を行なった。なお、次回第19回会議は福岡にて行われる予定。

1.変革期の日加経済

  1. 変革期の日加経済をテーマに行われた15日午前のプログラムでは、(1)ウィルソンBCE社社長兼CEOの講演と (2)ケニー・カーティス ドイツ銀行証券上席副社長が議長、石原秀夫ゴールドマン・サックス証券会長、ヌーラ・ベック ヌーラ・ベック・アンド・アソシエーツ社長が、それぞれ日本側、カナダ側のパネリストを務める経済パネル・ディスカッションが行われた。

  2. 「情報通信と世界経済」と題した講演でウィルソンBCE社社長兼CEOは、「アジアを中心とする情報インフラの整備、情報分野での規制緩和の推進よる競争促進・技術進歩の加速化を背景に、2000年までには情報通信は、世界最大の産業となるであろう。光ファイバー、無線ネットワーク、広帯域ネットワークなどでつながれ、世界経済はより統合されたものとなる」と述べ、情報通信産業の発展による世界経済の変容を説明した。

  3. パネル・ディスカッションでは、まず議長を務めたカーティス氏が「日加両国経済の変革の背景には、
    1. 冷戦の終結、
    2. 米加政府などの財政赤字問題、
    3. 技術革新、
    4. アジアの急速な経済発展、
    という世界的な動きがある」と述べた。これを受け、石原氏が日本経済について、「バブルの崩壊(資産デフレ)、円高、企業活動のグローバル化などを背景に日本企業の経営が変化しつつあり、終身雇用・年功序列崩壊の兆し、企業間関係(系列)の見直し、コーポレット・ガバナンスの見直し(株主重視)、海外への生産拠点の移転が見られる」と説明した。一方、カナダ経済についてベック女史は、経済発展の歴史を、
    1. 産業革命から20世紀初頭までの重工業中心の時代、
    2. 20世紀初頭から70年代の組立加工業中心の時代、
    3. 情報産業が中心となる80年代以降の時代
    に分けた上で、「情報産業がカナダ経済全体に占める雇用比率、GNP比率を見ると、カナダ経済はすでに情報産業中心の経済になってきている」との認識を示した。

2.日加フォーラム2000フォローアップ報告

  1. 日加両国首相の合意によって設置された日加フォーラム2000(日本側議長:経団連大河原良雄特別顧問、カナダ側議長:ピーター・ローヒード前アルバータ州首相)は、1992年12月に日加両国首相に提出した最終報告書について、この度フォローアップを行った。そこで、初日の午後は、日加フォーラム2000のフォローアップ報告をテーマに、(1)同フォローアップ作業についての報告を行うとともに、(2)最終報告書・フォローアップにおいて取り上げられている観光、人的交流に焦点を当て、パネル・ディスカッション、講演を行った。

  2. 日加フォーラム2000のフォローアップ報告についてスピーチを行ったケニーウォレス日加フォーラム2000カナダ側副議長は、「フォローアップ報告では、今後日加両国が優先的に取り組む分野として、
    1. ハリファックス・サミットでの協力、
    2. 経済分野での協力(WTO、APECでの協力)、
    3. 環境分野での協力、
    4. 文化面での協力(日加相互理解基金の設立)、
    5. 既存の姉妹都市交流を通じた草の根交流の促進、
    6. 日加フォーラム2000と類似した恒久的なフォーラムの設置、
    を提案した」と説明した。これを受け、大河原日加フォーラム2000日本側議長が「カナダはアジア太平洋に目を向けるようになってきた。日加間に恒久的なフォーラムを設置することを強く支持する。また、日加はお互いに、アメリカとの紛争解決方法について学び合うべきである」とコメントを述べた。

  3. 観光について行われたパネル・ディスカッションでは、議長を務めたウィリアムス エンプレス・ホテル総支配人が、「企業の慰安旅行に対する税制上の優遇措置の拡大、関西国際空港の開港により、カナダへの日本の観光客は増えている。現在は若い女性が主要な観光客マーケットであるが、今後はシルバーマーケット(年配層)も拡大する」と現状と見通しについて概括的に説明した後、カナダ側パネリストのブキャナン カナダ観光評議会会長が、「カナダ観光評議会は積極的に日本人観光客へのマーケティングに取り組んでおり、今年は前年比3倍増の 850万米ドルを支出する予定である。これにより、土産店の充実、修学旅行への対応の強化、日本語サービスの強化を行う予定である。」とカナダ観光業界の日本の観光客受入れへの取組みを述べた。これに対して、日本側パネリストを務めた安部 近畿日本ツーリスト社長は「日本の観光客は、観光地としてのカナダに期待するものとして、美しい自然、治安の良さなどを挙げている。観光により日加の人的交流が深まるにつれ、日本の経常収支黒字の改善や相互理解の促進などの効果が生まれている」と述べ、カナダ側へのアドバイスを行い、観光促進の積極的な側面を説明した。

  4. また、日加間の人的交流の具体例として取り上げられたコープ・ジャパン・プログラムについて、ビクトリア大学のハゲット コープ・ジャパン・プログラム部長が、「コープ・ジャパン・プログラムは、5年間の大学課程であり、4年間の大学における授業と最長1年の日本企業での研修から成るもので、これまでに 122人が日本の企業で研修を受けている」と説明した。また、実際にコープ・ジャパン・プログラムを体験した大学生が日本での経験を語った。


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