なびげーたー

「隣国」ロシアとの経済交流

経済協力部 専門部長 江部 進


「市場経済移行国」ロシア。わが国と隣接するこの大国との経済交流を幅広い視点から、また中長期視点からじっくり考える必要はないだろうか。

わが国経済界がソ連との間に合同会議を設置し(国内に日ソ経済委員会を組織)、経済交流の促進に乗り出したのは1965年である。70年代にはこれを足場にシベリア極東資源開発協力が進展、日ソ貿易も拡大を辿った。その後、シベリア極東資源開発協力の気運は沈静し、80年代末頃から合弁、経済特区など外資を入れる「新形態の協力」が強調されるが、間もなくソ連の債務支払遅延が顕現する。92年には日ソ経済委員会は日本ロシア経済委員会と改称、体制変革を目指すロシアとの経済交流促進を担うことになった。ソ連を継承するロシアが、日本にとり、さまざまに重要な隣の大国であることは変わらない。

だが、日ロ経済交流は今不遇の時期にある。支払遅延、経済改革に伴う混乱、流動的な政治情勢などが交流の活力を殺いでいる。しかし、ロシアはやはり進んだ工業国であり、エネルギー等豊富な天然資源と先端的分野も持つ科学技術力を考えれば、遠からず有力な経済を誇る国として登場してくる可能性が大である。欧米企業が先行投資的な足場をロシアに築く所以である。日本でも、そういうロシアの、特に極東に関心を向ける企業は多いが、まだ相対的魅力が薄いため、ロシア側の呼びかけに応ずる声は少ない。ロシアは、この地域を北東アジア経済、アジア太平洋経済に参画するための橋頭堡と考えている。これに対し、中韓両国はもとより、アメリカの関心も強い。

日ロ経済委員会では、このような極東地域において、日ロ間の象徴的プロジェクトとして、また日ロ間、さらには北東アジアの経済交流に大きなインパクトを与えるものとして、第4次森林資源開発協力やサハリン大陸棚石油天然ガス開発協力の早期実現に努めている。ヤクーチャ天然ガス鉱床の開発協力の可能性も検討している。また、サハリン、沿海、ハバロフスクの3州から優先プロジェクトとして提示された港湾の拡充整備、石炭開発分野の協力可能性の検討にも着手しており、この中には図們江開発に関連するザルビノ港建設も含まれている。勿論、これら開発にあって環境への配慮は重要である。

年内にもロシア側経済委員会との第2回会議が開催され、これらの問題が審議されよう。一方、政府間にも閣僚レベルをトップとする貿易経済委員会が設置され、民間と連携しつつ日ロ経済交流を促す枠組みができる。とにかく、日ロ間で何がいちばん必要かといえば、相互理解の増進というごく当たり前の回答が出てくる。それには人の交流拡大が基本となり、それは、経済分野でも「経済界のロシアへの関心の高揚が必要」との河毛日ロ経済委員長の言葉に戻っていく。


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