訪ASEAN(第3次)ミッション(団長 豊田会長)/6月4日〜6日

ブルネイの政府首脳と懇談


経団連では、今年2月のシンガポール/タイ/ベトナム、4月のフィリピン/マレーシア/インドネシアに引き続き、訪ASEAN第3次ミッションをブルネイに派遣した(団長:豊田会長、団員:那須副会長、由布JAIDO社長、根道三菱商事取締役、藤原常務理事)。今後、両国間でどのような協力関係を築いていくか、APEC大阪会議の議長国日本に対する期待などについて、モハメッド外務大臣、ラーマン産業資源大臣、イスマイル開発大臣、ヤクブ大蔵次官、アリミン総理府石油・ガス担当次官と懇談した。

  1. 経団連からの指摘事項
  2. 1.エネルギーの安定供給

    ブルネイにとって日本は最大の貿易相手国〔輸出先として日本は第1位、日本からの輸入はシンガポールに次いで第2位(91年)〕であり、日本にとって同国は石油と天然ガスの重要な供給国である。ブルネイの石油・ガス部門はGDPの62%(90年)を占め、原油の約3割、LNGの9割以上が日本に輸出されている。今後とも安定的な関係を維持したい。

    2.日本企業による多角化事業への協力

    ブルネイでは、石油・ガス産業への依存度を減らすため、産業の多角化に取り組んでいるが、日本企業もこの試みに協力すべく努力している。
    日本国際協力機構(JAIDO)では、ブルネイ政府の要請に応えて、ハタの養殖事業を進めている。このプロジェクトを成功させるためにブルネイ政府からも協力を仰ぎたい。
    三菱商事もMCFARM社を通じて、ブルネイの食糧自給率の向上を目指して、肉牛の畜産事業やトマトの水耕栽培などを行なっている。引き続き支援をお願いしたい。
    JAIDOでは、LNGを利用した還元鉄の製造事業を企画している。港湾施設や電力供給などのインフラをブルネイ政府が整備してくれれば、このプロジェクトも実現可能だと思うので検討してほしい。

    3.APECへの対応

    アジアには文化的背景も経済の発展段階も異なるさまざまな国や地域が数多く集まっている。今年11月には大阪でAPECの会合が開催されるが、貿易や投資の自由化を進めるに当たっては、各国の実情に配慮して緩やかな合意を目指すことが重要である。
    APECを前に経団連では、貿易と投資の自由化に関する民間経済界の意見をまとめるために、10月にAPEC参加国の民間経済界の代表を招き、「APECビジネス・コングレス:APB-Net II」を開催する。ブルネイからも参加してほしい。

  3. ブルネイ側の発言要旨
  4. 1.産業の多角化

    石油・ガス資源は有限であるため、その他の経済活動の振興がブルネイにとっての最大の課題である。引き続き日本企業の協力をお願いしたい。JAIDOのハタ養殖事業や三菱商事のMCFARM事業は高く評価している。還元鉄の製造プロジェクトについても検討したい。
    石油ガス関連産業以外の商工業を発展させるため、産業資源省内に「持株会社」を設立した。民間企業と競合しない分野に投資することを狙っている。合弁事業の相手としても、その活用も考えてほしい。
    ブルネイの人口は約27万人と少ない。熟練、未熟練を問わず恒常的に労働力が不足していることから、特に資本集約型の産業の育成に力を入れたい。

    2.APECへの対応と国際関係

    APECにおける貿易・投資の自由化の議論については、基本的に支持している。但し、問題はタイミングであり、自由化の時期については調整すべき余地がある。
    ブルネイは84年にASEANに加盟し、ASEAN各国との関係は良好である。ASEAN域内の貿易、ASEANと日本との貿易も拡大している。今年8月にはASEAN地域フォーラム、同拡大外相会議が、また9月にはASEAN経済閣僚会議がブルネイで開催される。実りある国際会議にすべく準備を進めている。
    OECD開発援助委員会(DAC)によれば、96年にブルネイは、所得向上に伴い途上国の認定要件を満たさなくなる。確かに1人当たりのGNPは1万4,000ドルを超えるまでになったが、石油・ガス以外の産業は近隣諸国に比べ立ち遅れている。引き続き支援をお願いしたい。

    3.円高の影響と日本への期待

    円高に伴い、自動車など日本からの輸入品の価格が上昇しており、わが国の消費者にも影響があると思う。ブルネイは円借款を受けていないので、返済に関する負担増加の問題はない。
    94年の統計によれば、日本からASEANへの輸出は604億ドル、ASEANから日本への輸出は378億ドルである。日本からの対ASEAN投資は全体として急速に伸びているが、対ブルネイ投資は伸び悩んでいる。将来に期待している。


ラーマン産業資源大臣(左)と会談する豊田会長


JAIDOのハタ養殖事業について

89年、92年に経団連ミッションが訪問した際、石油・ガス以外の外貨獲得型産業の育成への協力を要請された。これを受けてJAIDOがブルネイで始めたプロジェクト。ブルネイ近海の天然稚魚を捕獲し、日本の養殖技術を利用して、海上生け簀で養殖し、活魚を香港等のアジア市場に輸出する。93年8月に試験養殖を開始し、事業化に向けて作業を進めている。


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