APECにおける民間活動の報告会(進行 伊藤国際産業協力委員長)/6月5日

日本はAPEC議長国としてのリーダーシップ発揮を


経団連と日本商工会議所の共催で「APECにおける民間活動の報告会」を開催した。はじめにAPECの諮問機関であるPBF(パシフィック・ビジネス・フォーラム)の日本代表を務める室伏伊藤忠商事社長および立石オムロン副会長の両氏より、5月26〜27日にシンガポールで開催されたPBFの第1回会合の模様について聞いた。続いて、三好事務総長から経団連が内外の経済団体と協力して本年10月、大阪で開催を予定している「APECビジネス・コングレス:APB-Net II」の準備状況を報告した。

  1. 室伏伊藤忠商事社長発言要旨
  2. 1.PBFの概要について

    PBFは、1993年のAPECシアトル会議で設立が決まったAPEC内の民間諮問機関で、各国・地域より2名ずつ(1人は大企業、1人は中小企業の代表)のビジネスマンにより構成される。昨年、APEC首脳に対し、APECの将来ビジョンを「メンバー諸国の経済と人々の生活水準の向上に寄与するダイナミックな成長が将来にわたって維持すること」と定義し、
    1. 貿易および投資の自由化
    2. ビジネスの円滑化
    3. 人材・インフラ開発などの支援メカニズム
    4. 政府と経済界のパートナーシップ
    を提言した。ボゴールでのAPEC首脳会議では、PBFの機能を重視し、もう1年の活動延長が決まった。

    2.第1回会合(於 シンガポール)について

    本年のPBFの基本作業は、本年11月のAPEC大阪会議で採択予定の「自由化のための行動指針」作りの参考にするため、昨年PBFが提言した40以上の提案に優先付けをすることである。今回の会合で重点的に取り上げられた具体的提案は、
    1. 関税引下げスケジュールの決定
    2. 貿易および投資の非関税障壁の撤廃
    3. WTO紛争処理メカニズムを補完する域内の紛争処理メカニズムの設置
    4. APEC域内の人的移動の円滑化
    5. 中小企業の奨励策
    であった。この他にも地域の多様性の問題に関して「18−X formula」(注:いわゆるFlexible Consensus。必ずしも全員の賛成が得られなくとも大多数の賛成があれば、コンセンサスがあったとみなす)を採ることなどが提案された。
    私からは紛争処理メカニズムの第一歩としての各国にオンブズマン制度の確立、インフラ拡充計画の実態を把握するための民間参加によるタスク・フォースの編成、APEC内における民間常設諮問機関の設置の3つを提案し、いずれも会議で前向きに受けとめていただいた。

    3.自由化目標について

    経団連側から「昨年のPBFレポートで、先進国については2002年、発展途上国については2010年までの自由化目標が提言され、この提案を受けてボゴール宣言では先進国が2010年、発展途上国が2020年と決定された」ことについての質問があった。
    これに対し、室伏社長から「昨年のPBFにおける自由化のターゲット設定では、全般的に前向きにやれるだけやっていこうという雰囲気があり、後ろ向きの発言はほとんどなかった。懸念していたよりもメンバー各国は自由化に前向きであり、今年もこの雰囲気は変わらないだろう。ボゴールで決められた目標時期をどうこうするという話も出ていない」との回答があった。

    4.日本への期待

    今年のAPEC議長国である日本に強いリーダーシップを発揮してほしいという各国の要望が多くある一方、日本の市場開放の遅れに対する不満も強い。
    昨年の6月にAPECに先立ち、インドネシアが相次いで投資・貿易の自由化策を打ち出したように、日本も率先して指導力を発揮すべきである。
    また、域内の多様性こそがAPECのダイナミズムの源泉であると前向きに捉えられており、各国経済の実態を踏まえた現実的な自由化・円滑化、経済協力を推進して行こうというコンセンサスが得られている。

  3. 立石オムロン副会長発言要旨
  4. 1.第1回会合の総括

    昨年の提案は概論であり、今年はもっと具体化、肉付けすべきだという声が強い。「もはやトークショーではない」というのがPBFメンバー共通の認識である。今年はビジネスの視点から各国の問題点を提起し、より短期で達成可能な具体的項目に絞って提言することで合意している。
    私からは規制改革、中小企業の育成の2点を提起した。規制改革には規制緩和と法整備の2つの側面があり、規制緩和については、短・中・長期のアクションプランを策定するためのタスク・フォースを編成し、基本原則として現状強化の法律や規制は作らない(スタンド・スティルの原則)、一定期間を経たら廃止・見直しする(サンセット条件)などを掲げる。
    また、法整備に関しては知的所有権の必要性を強調し、技術の価値が正当に評価されていない現状では技術移転は難しいと指摘した。

    2.日本に対する各国の印象

    一番大きいのはやはり今年のAPEC議長国として強いリーダーシップを発揮し、会議を成功に導いてほしいという期待感である。同時に日本の現状への不満も多く、日本が提案しているオンブズマン制度そのものが十分に機能していないとの声があった。また、遅々として進まない規制緩和にも批判の声があった。


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