カムタイ ラオス首相との懇談会/6月1日

メコン川流域の開発の行方とラオスの将来


ラオスのカムタイ首相が経団連を訪れ、豊田会長、米倉副会長ほかと懇談した。ラオスは1986年、インドシナ3国(ラオス、ベトナム、カンボジア)のなかで最初に市場経済化に向けて改革開放路線を打ち出した。現在ではカムタイ首相(91年8月就任)の指導の下、安定的な経済運営に成功し、外資導入にも積極的に取り組んでいる。
同首相の説明の概要は以下の通り。

1.世界に誇れるラオスの資源

アジア太平洋地域の目覚ましい経済成長の勢いは、ラオスにも確実に及んでいる。ラオスはメコン河流域の広大な地域の中央に位置し、周囲を5カ国に囲まれた内陸国である。ラオスを含む同流域6カ国の総人口は2億人以上に達する。
ラオスの人口は470万人、1h当たりの人口密度は20人程度である。広大な国土を持ち、森林、水、鉱物など豊富な天然資源のほか、古い文化遺産と美しい観光スポットにも恵まれている。

2.市場経済化への取り組み

86年以降、市場経済化に取り組んでおり、各種の経済部門間での競争を奨励している。外国投資奨励管理法に基づき、外国の投資家および外国法人は、所有権と経済的利益を保護されている。
最近の経済成長率は7〜8%であり、インフレ率は4〜5%となっている。94年末時点での対内投資累計額は50億ドルを超えた。経済改革に伴い国民生活も向上し、政治の安定とともに治安も良く、海外の投資家からも高い評価を受けている。

3.2000年までの経済社会開発計画

インフラ整備の必要性は痛感しており、公務員、技術者、熟練労働者の不足という問題も抱えている。そこで政府は、国の発展と国民生活の向上を確保するため、93年から2000年までの経済社会開発計画を策定した。これは農林業の開発とともに工業、サービス業の振興を目的としている。メコン川での水力発電所の建設も重要な一項目となっており、計画では1万8,000メガワットの発電能力を持つことになる。また、近隣諸国とラオスを結ぶ道路網、通信網の整備、空港の建設なども盛り込んだ。この計画はこれまでにも大きな成果を上げてきた。ラオスはこうした経済開発に力を入れていくが、環境への配慮も忘れない。

4.電力開発と近隣諸国への供給

国内への電力供給だけでなく、近隣諸国へも電力を供給する計画である。現在でも、タイに電力を輸出しているが、タイの電力需要は年々増加している。ベトナムとの間でも、相互に電力を供給し合う合意を結んでいる。ベトナムに近い山岳地帯の村はベトナム側から電力の供給を受けており、ベトナムにも将来ラオス側から電力供給を受けなければならない場所も出てくるであろう。カンボジアについては、発電所を建設するだけの条件が整っていないことから、ラオスに電力を供給してほしいとの要請があり、現在、同国との間で協議を進めているところである。
将来、国内での電力消費量と輸出がどの程度になるかについて研究を進めている。発電能力が増えれば、工業化のみならず農林業の振興にも役立つと考えられる。

5.ASEANとの関係

ラオスは近隣諸国と政治的にも経済的にも良好な関係を維持している。これまでASEANのオブザーバーとして、政治経済の各分野において、ASEAN諸国との関係を発展させてきた。現在、ASEANへの加盟に向けて準備を進めている。英語を話せる政府職員が少ないなど、解決しなければならない問題は残っているが、ASEANに加盟することで相互に利益を得られるようにしたい。

6.日本への期待

市場経済化とともに諸外国との経済関係の拡大に向け、今後とも努力していきたい。特に日本はラオスにとって最大の援助供与国である。日本企業にもわが国への投資を検討してもらいたい。資本、技術、経験を持つ日本から学びたいと考えている。日本との間では相互補完的な関係を築くことができると思う。そのためにもわが国の現状を実際に見に来てほしい。その際には国を挙げて歓迎したい。


カムタイ ラオス首相と豊田会長


ラオス人民民主共和国

インドシナ半島の中央に位置し、中国、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーと国境を接する内陸国。国土の42%が森林、国民の90%が農民、GDPの60%が農林産業である。産業としては、木材、縫製業、オートバイ組立、水力発電が有名であり、これらを輸出している。
86年11月の第4回人民革命党大会で「新思考(チンタナカーン・マイ)」に基づく改革路線を決定した。具体的には、国営企業の独立採算制への移行、民営企業の復活、不採算企業の売却、為替レート統一などにより積極的に市場経済化を推進するとしている。88年には外国投資法を制定し、外国からの投資・経済援助に門戸を開き、現在は外資の導入に積極的に取り組んでいる。
ラオスにとって日本は最大の援助国である。89年11月にカイソン首相(当時)が「明治維新に学べ」として西側諸国のなかで最初に日本を訪問するなど、日本に対するラオスの期待は極めて大きい。また、同首相訪日時には経団連でも懇談会を開催している。
日本政府とアジア開発銀行等が進めている「インドシナ総合開発フォーラム」との関係で、ベトナム、カンボジアとともにラオスは将来の開発が注目されている。同フォーラムは、93年1月、宮沢首相(当時)がインドシナ地域全体の調和のとれた開発について討議する場として提唱したもの。今年2月に25か国、8国際機関の代表者を招き、日本で閣僚会合が開催された。


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