北アフリカ委員会(共同委員長 渡辺英二氏)/5月31日

アルジェリアの大統領選挙の動向および経済改革をめぐって


北アフリカ委員会では、アルジェリアの大統領の諮問機関である国家経済社会評議会(NESC)のブーシュアレブ議長を招き、同国の政治動向ならびに経済改革の内容等について説明を聞いた。同議長は、「アルジェリアは現在、政情の安定化と経済改革を最重要課題として取り組んでおり、特に共和制を維持していくためにも、本年末予定の大統領選挙は確固たる決意で実施せねばならない」と強調した。以下はブーシュアレブ議長の説明の概要である。

1.政治動向について

政情が危機的状況に至った原因として、90年6月の新憲法による単一政党制から複数政党制への移行がスムーズに進まなかったことが指摘でき、警察、軍当局はテロリストの活動を抑制するために、たゆまない努力を続けており、個人・団体の財産、国土ならびに国民をテロの脅威から守るために軍事行動を起こした。テロリストの弾圧は国民の意思を反映したものである。
また、共和制を維持し政治的安定を回復するためにも、本年末に予定している大統領選挙を確固たる決意で実施しなければならない。選挙を通じて、アルジェリア国民のアイデンティティーが高まり、政治の民主化、安定化が進展すると確信している。

2.経済発展の潜在力について

アルジェリアが他の近隣諸国に対して比較優位にある点は、
  1. 若年かつ熟練の労働者が豊富であり、また人件費も安価であること、
  2. 石油、天然ガスはじめ天然資源が豊富であること、
  3. 電気通信および道路、港、空港等の経済インフラが整備されていること、
  4. 地中海に面し観光地としてのポテンシャルが高いこと、
  5. 欧州、中東およびアフリカ市場へのアクセスとして地理的に要衝を占めること、
などがあげられる。
こうした比較優位をテコに経済発展をなしとげたい。

3.経済改革について

現在、政治的民主化と並んで経済改革を積極的、広範に推進中であるが、これによって市場経済のルールを強固なものにしていきたい。政府は先般、経済財政3カ年プログラムを発表したが、本プログラムは以下の4項目を目標としている。すなわち、
  1. 雇用機会を拡大するためにも、実質GDP5%の経済成長を達成する、
  2. インフレ率を10%以下に抑制し、国民の生活水準の向上を図る、
  3. IMF等の国際金融機関の支援を得ながら、国際収支赤字を対GDP1.5%へ引き下げる、
  4. 投資を促進するため、貯蓄率を対GDP比3%程度に維持する、
などである。
かかる目標の下、財政改革、貿易の自由化、通貨政策・銀行金融制度の改革、住宅建設の促進、国内価格の自由化、国営企業のリストラ、社会保障制度の改革等を順次進めていくつもりである。


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