中南米委員会(共同委員長 高垣 佑氏)/5月30日

リオ・グループ・トロイカ3カ国の外務大臣との昼食懇談会


中南米委員会では、「第3回日・リオ・グループ・トロイカ外相会合」への出席のため来日したレオロ・エクアドル外務大臣、ランプレイア・ブラジル外務大臣、ならびにアラニバル・ボリビア外務大臣を招いて昼食懇談会を開催し、3カ国の大臣よりリオ・グループの活動をはじめ中南米地域の最近の政治・経済情勢について説明を聞き、種々懇談した。

  1. リオ・グループおよびその活動
    ― レオロ・エクアドル外務大臣説明要旨
  2. 1.リオ・グループとは

    リオ・グループは、中米紛争の解決を目的に、86年のリオ宣言により結成された。
    ラテン・アメリカ(以下「ラ米」)には、OAS(米州機構)、SELA(ラテン・アメリカ経済機構)、ALADI(ラテン・アメリカ統合連合)、SEPAL(国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会)等、種々の地域機構があるが、リオ・グループは、それら組織の活動の枠外の包括的な問題を論じる、非公式かつフランクな討議の場である。現在では、政治、経済、国際問題等、幅広い議題を扱っており、域内の民主化、人権擁護、麻薬対策、経済の自由化、経済統合の推進等に取り組んでいる。きたる9月には、エクアドルの首都キトーで元首会談および外相会談が行われる。

    2.日本との関係

    今次来日の目的は、貿易、経済、技術、社会等、幅広い分野での日・ラ米間協力について話し合うためである。ラ米と日本との経済関係の拡大を期待している。
    日本を含むアジアは、世界の成長の中心であるが、ラ米も近年、著しい成長を遂げている。政治的、経済的構造改革に取り組み、経済の自由化、開放化を進めている。WTOを支持しつつ、自由貿易を一層進めたいと考えている。

  3. ボリビアの経済政策
    ― アラニバル・ボリビア外務大臣説明要旨
  4. 1.ボリビア政治・経済の現状

    ボリビアの政治、経済は、ラ米全体の状況と比較しても安定していると自負する。
    かつてボリビアは、ラ米で最もインフレ率が高く、年間2万5,000%の時期もあったが、現大統領の思い切った経済政策が奏功し、去年のインフレ率は年間8%に止まった。これはラ米で2番目に低い数値である。また、GDP成長率は年率5%、97年の目標は年率6.5%である。
    現在、経済構造改革の一環として、「キャピタリゼーション=資本化政策」を推進している。国営企業を民営化し、新会社の50%を国民が保有するプログラムである。その資金を基に年金制度の整備、教育システムの改善を図りたい。

    2.ラ米におけるボリビアの役割

    ボリビアは、ラ米の統合に向けて重要な役割を果たしつつある。アンデス・グループの加盟国であり、メルコスールとも緊密な関係を作りつつある。太平洋諸国とも、協力しつつ、互いの発展を図りたい。

    3.インフラの整備

    ラ米のエネルギー統合計画の一環として、ボリビアのサンタクルスから、ブラジルのサンパウロに至るガス・パイプラインの建設を計画している。

  5. 中南米情勢全般について
    ― ランプレイア・ブラジル外務大臣説明要旨
  6. 1.ブラジル経済の現状

    ブラジルは、
    1. 先の大統領選挙で、カルドーゾ大統領が54%の得票を得たこと、
    2. メルコスール諸国が、過去に例を見ない繁栄をしていること、
    3. 特にインフレ率が近年になく低いこと、
    等の事実によって、国際社会の信頼を回復したと信じる。
    メルコスール域内の貿易は、調印した90年には20億ドルであったが、今は100億ドルで5倍となっている。経済活動の拡大により、多くの貿易、投資の機会が生まれるとともに、インフラの整備、エネルギー供給の拡大が必要となっている。
    ボリビアとのガス・パイプラインの建設、ベネズエラからアルゼンチンにまで至る種々のエネルギー統合プロジェクト、太平洋と大西洋を結ぶ道路の建設等、多くのプロジェクトがある。

    2.ラ米の経済的統合、自由貿易の推進

    われわれは、あらゆる地域グループが経済統合に参加すべきだと考える。例えばNAFTAに各グループが参加していく形ではなく、より包括的、開放的に進めるべきだと考える。排他的になってはならない。
    WTOは自由貿易のため最重要の機関である。日米間で現在、自動車分野で難しい交渉がなされているが、WTOを最重視する日本の立場を支持する。

    3.「テキーラ・ショック」の影響

    今年1月に生じたメキシコの通貨危機、いわゆる「テキーラ・ショック」の影響は少なからずあった。ブラジルでは、今年4カ月で短期資本が70億ドル逃避した。しかし、現在では30億ドルを回復している。

    4.ペルー・エクアドル間の紛争

    本年1〜2月、両国国境で生じた軍事的紛争は、リオ・デ・ジャネイロ議定書保証国であるアルゼンチン、チリ、アメリカ、ブラジルの4か国が和平の仲介を取り、2月17日にイタマラティ和平宣言(停戦宣言)がなされ収拾した。この宣言に基づき、保証国が停戦監視団を派遣した。現在、問題を外交的に解決する方策を探っている。
    他の地域の状況と比較して大きな対照をなしているのは、当事国の努力のほか、関係国が機敏に対応し、平和的に解決を図ることができた点であり、ラ米の平和への指向と成熟度を示していると考える。


リオ・グループ「トロイカ3カ国」

中南米12カ国で構成するリオ・グループの毎年の議長国、前議長国、次期議長国の3カ国により構成。今年の議長国はエクアドル、前議長国はブラジル、来年の議長国はボリビアである。

日・リオ・グループ・トロイカ外相会合

日・中南米関係および国際問題全般についての意見交換の場として、1993年以降、わが国とリオ・グループの「トロイカ3カ国」との外務大臣レベルの会合が、毎年、日本あるいは中南米地域において交互に開催されている。今年は第3回目。


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