ブリタン欧州委員会副委員長との懇談会(進行 樋口ヨーロッパ委員長)/6月5日

規制緩和と日欧関係


ヨーロッパ委員会では、ブリタン欧州委員会副委員長とペリゴ欧州産業連盟会長ほか欧州のビジネスマンを招き懇談会を開催した。席上、欧州側から、規制緩和によるビジネス・チャンスの拡大、第三国市場における日EU(欧州連合)協力などにつき、意見が述べられた。また、日本側からは、樋口廣太郎副会長・ヨーロッパ委員長からわが国の規制緩和の進展状況について、石原秀夫国際企業委員長から日本経済の現状について、説明した。
ブリタン副委員長は「規制緩和について、EUと経団連は協力関係にある。EU企業は、日本の規制緩和により、ビジネスチャンスが拡大すると考えている」と、一層の規制緩和への期待を表明するとともに、規制緩和推進に向けて経団連と協力していく姿勢を明らかにした。

  1. ブリタン欧州委員会副委員長発言要旨
    1. 欧州委員会は日本政府との間で日本の規制緩和について議論している。今日は規制緩和を通じた日本市場における事業機会の拡大について、日本のビジネスマンと話し合いに来た。

    2. 規制は事業機会を縮小させている。規制緩和により、競争力の強化や新事業の創造が期待できる。欧州では統合に伴い、規制緩和を推進してきた。残存規制も緩和・撤廃していくつもりである。

    3. 最近の日本政府の規制緩和への取り組みは評価しているが、経団連や欧州委員会が行った提案が十分取り入れられていない。日本の規制緩和推進において、経団連は重要なパートナーであり、今後とも協力していきたい。

    4. 日本市場での成功は難しいとのパーセプションから、欧州企業は日本市場への進出を自己規制するきらいがあった。しかし、欧州委員会は、日本に対する投資や輸出を促進させようとゲ−トウェイ・トゥー・ジャパンや欧州ビジネスマン研修計画(ETP)といったプログラムを実施してきた。日本市場に対する理解なしに、成功はないと考えたからである。日本企業もこうした欧州の取組みに対応し、より開放的になってほしい。
      学者、経営者、ビジネスマンの交流を通じてお互いが学べることは多い。交流を通じた相互理解が新しいチャンスを生む。
      日本企業が長期的な取引関係を重視しそれによって成功を収めていることは理解しているが、世界マーケットでは構造変化が生じている。固定的な長期的取引関係のみならず、フレキシブルな対応が必要である。

    5. EUでは先般、対日政策をレビューし、報告書「欧州と日本 次のステップへ」をEU理事会で採択した。同報告書では、日本を対等なパートナーとして位置づけ、貿易・投資の促進のみならず、環境分野や政府開発援助(ODA)での協力をうたった。

  2. ペリゴ欧州産業連盟(UNICE)会長発言要旨
    1. UNICEは日本との交流を歓迎しており、また欧州委員会は、UNICEをはじめ経済界の意見を取り入れることを歓迎している。経団連とはこれまで、GATT/WTO(世界貿易機関)や輸出管理の問題で意見交換を行なっている。

    2. 対日関係では、日本の巨額の経常収支黒字を懸念している。経常収支の偏りは保護主義をもたらすことになる。より均衡した状態が望ましい。欧州の経済界は、建設的な対日政策に取り組む欧州委員会の姿勢を支持しているが、EUのビジネスが不当に差別されるような事態には反対する。

    3. 欧州経済界は規制緩和を支持しているが、具体的な成果が挙がらないと不信感を募らせる。円高や不況の長期化の中で規制緩和の推進が困難なことは理解するが、経団連の規制緩和推進努力に期待したい。

    4. 日欧間の文化的な違いが対日事業の障害となっていることは事実であるが、成功している企業は、その違いを埋めるためにさまざまな努力をしている。

    5. 在EU日系企業と在日EU系企業の比率は5対1である。EUと日本の人口比が3対1であることを考えると、実質的投資比率は15対1であると分かる。

    6. UNICEは全ての企業に平等の事業機会が与えられることを望んでおり、日本の対米WTO提訴を支持している。

    7. 日欧の企業は、今後、2国間の貿易投資のみならず、環境、振興市場での協力を推進していくべきである。

  3. 質疑応答
  4. 経団連:
    長年にわたる努力の結果である対EU投資の成功により、日欧間の貿易インバランス改善に貢献していると思う(自動車)。
    欧州側:
    日本の自動車産業の対EU投資は、確かに現地の部品メーカーの供給拡大に貢献している。しかし、日本国内での調達でも同様の取り組みを行なってもらいたい。日本国内においては、品質・価格のみの要素では調達先が決定されないような印象をもっている。
    経団連:
    そういったことはないと認識している。自動車産業の場合、デザイン・インなどに要する時間が少なくとも4年ぐらいあると認識してほしい。
    欧州側:
    日本市場はそもそも外国企業に対して閉鎖的な上、外国企業を参入させるなら、アメリカ企業と考えているとの印象がある。例えば公共入札の際、公示の後スペックが変更になるという事態があった。また、欧州企業の落札が極端に少ない。
    経団連:
    不当な措置があれば詳細を教えてほしい。調査する。
    行政手続に不満があれば行政手続法に基づいて提訴してほしい。また業界団体への加盟について問題があれば、経団連の苦情窓口に申し出てほしい。
    日欧間には、市場に関する情報のインバランスがある。欧州企業の努力に期待したい。


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