流通委員会企画部会(部会長 青木辰男氏)/5月30日

流通構造変革に対する取組みをメーカーからきく


流通委員会企画部会では、流通分野の構造変革に関するヒアリングを行なっている。今回は、味の素の大瀧常務取締役と三洋ライフ・エレクトロニクスの笹川社長を招き、企業・業界としての取組みや今後の展望等について説明を聞くとともに、意見交換を行なった。

  1. 味の素
    大滝常務取締役説明要旨
  2. 1.食品流通の構造変化

    1. 食品取扱の小売業の店舗数は1982年から94年の間に、73万から59万に減少している。内訳をみると、同期間に、組織小売業が9万から14万に増加しているのに対し、中小小売業は65万から45万に減少している。組織小売業の中では業態の多様化が進んでいるが、大店法の見直し等により、今後寡占化が進むと思われる。これに対抗すべく、中堅スーパーのグループ化、組織化も始まっている。

    2. こうした変化は食品取扱の卸売業にも影響を与え、店舗数は94年初めて前回調査を下回った。上位集中が進み、大手卸売業と大手量販店の取引が増加する一方、中小卸売業の系列化、フルライン化が見られる。

    3. 今後の展開としては、大手小売業と海外企業の提携が進むとともに、卸売業については、物流が主たる機能となり、物流能力やコストの差から、大手集中が一層進展すると見越される。

    2.味の素の取組み

    1. 味の素では、94年4月に外食用商品、95年4月に家庭用ドライ商品について、食品業界では初めて、建値とリベート制度を廃止し、メーカーの出荷価格のみとした。これは業態の多様化への対応に加え、日本の商取引慣行の不透明性・不公平性に対応した措置である。

    2. 取引制度の変更に伴い、ナショナルブランド製品については、引き続き消費者の食生活上のニーズやウォンツを踏まえた商品開発に努めるとともに、流通各業態と共同で、互いのニーズを出し合って商品開発に取り組んでいる。

    3. 今後は、小売店への棚割提案を通じて売場の活性化を図るなかで、自社商品の回転の促進や、自社商品と生鮮品を組み合わせたメニューの提案を通じた売上の向上等、単なる販促に止まらない価値訴求型の営業活動に取り組んでいくことにしている。

    3.今後の取組み

    独禁法の運用強化により、買い手の優越的地位の濫用は規制されたが、返品問題、改装・新規開店の際の労務提供、センター使用料の分担基準の明確化等については問題も多く、公正取引委員会の一層の監視を要望するとともに、メーカーとしても卸売業界における検討に協力していきたい。

    〔質疑応答〕
    問:日付表示問題については。
    答:95年4月に品質表示基準が改正された(97年4月完全実施)。メーカーとしては賞味期限表示のみとしたいが、小売業界では製造年月日のみの表示や賞味期限と製造年月日の併記等、対応が一致していない。

    問:小売店との直接取引については。
    答:大手外食チェーンへの納品等、既に部分的に始まっている。プライベートブランド等、直接取引が今後進む要因はある。

  3. 三洋ライフ・エレクトロニクス
    笹川社長説明要旨
  4. 1.家電流通の概要

    1. 家電メーカー各社は、昭和30年代より地域小売店の系列化を進めてきたが、昭和40年代には系列外の大型店、50年代にはチェーンストア、60年代以降はディスカウントストア、ホームセンター等の参入が相次ぎ、小売チャネルは多様化した。一方地域小売店では、取扱商品の幅を広げるとともに、メーカー・販社の提案もあり、5〜10店舗単位のチェーン化を図っている。

    2. 卸売業は、昭和30年代半ばまでは総合問屋が担っていたが、業界の急成長に伴い、メーカーの資本参加もあり、メーカー系の地域販売会社へと変化した。さらに50年代、量販店等のナショナル・チェーン化に対応するため、三洋電機では既存の販売会社を全国10社程度の広域販売会社に統合した。さらに1990年、メーカーの営業本部機能と広域販売会社を統合し、三洋ライフ・エレクトロニクスという全国販社が発足した。

    2.家電業界の現況と三洋ライフ・エレクトロニクスの取組み

    1. 家電業界では、91年後半以降94年年央まで31カ月連続で売上げが前年同月を下回る厳しい家電不況に陥った。海外製品の市場流入もあり、主要製品の価格下落も進み、90年と比較して小型テレビやラジカセの実勢価格がほぼ半落した。

    2. このような低価格化に対応し、メーカーでは海外生産品の国内販売が増加している。三洋電機の場合、94年は8%だった国内における海外生産品の割合が、95年上期には14%に急上昇している。
      また地域小売店に対しては、生き残りの一環として、取付工事やアフターサービス等ソフト業務の提供や商品提案型の販売を強化するよう指導を行なっている。

    3.今後の取組み

    1. 引き続き地域小売店に対するリテールサポートを強化するとともに、総合スーパー等非家電店に対しては、情報交換を密にし、物流の効率化や梱包の改善等により、各店のローコスト・オペレーションに協力していく。

    2. 三洋ライフ・エレクトロニクスの人員対策および地域小売店への支援強化の観点から、移動体通信やハウジングシステム、健康・娯楽等の新規開発商品の販売など、新規事業の拡大を図る。

    3. PL法対策や廃家電のリサイクルは、コストアップ要因ではあるが、社会的要請であり、着実に実施していく。

    〔質疑応答〕
    問:総合スーパーやディスカウンターの売上割合は今後とも伸びていくか。
    答:そう考えている。地域小売店は、店数では多数を占めるが、現在でも売上シェアは半分以下である。意欲ある後継者の増加により地域小売店数の減少は最近下げ止まり傾向にはあるものの、家電の領域拡大もあって相対的なシェアの低下は否めない。


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