産業政策委員会(委員長 青井舒一氏)/6月6日

新しい産業構造への転換に向けて産業政策の課題を考える


産業政策委員会では、当面の産業政策上の課題について、牧野力通商産業省産業政策局長と懇談した。新しい産業構造への転換に向けて、新社会資本の整備、規制緩和の推進等、今後の産業政策を展望した。以下は牧野産業政策局長の話の概要である。

1.経済の現状認識

景気については、住宅はそろそろ頭打ちで設備投資、消費も振るわない。円高の影響もあり、夏から秋以降、景気の先行きが心配される。完全失業率は3.2%になった。特に若年層の雇用不安が広がっており、社会問題化が非常に憂慮される。4月14日に緊急円高・経済対策を発表したが、逐次補正予算を組み、切れ目ない財政出動を行う。

2.構造変化に関わる問題点

円高が一層加速化する中で、思い切った産業の構造転換が迫られている。わが国では、少子化、急速な高齢化が進んでおり、2025年には2.1人で老人1人を支える勘定になる。
国内での設備投資が停滞している。製造業全体で日本の海外生産比率は7〜8%、アメリカは25%といわれる。アメリカは対内投資とのバランスがとれているが、日本は対外投資と対内投資は16:1で非常に偏っている。個別品目ではカラーTVが72〜73%、VTRが42〜43%と相当海外生産が進んでいる。このまま放置した場合、産業の空洞化、国内雇用、地域経済、技術開発への影響が懸念される。生産要素の高コスト化により製造業の競争力が弱まっており海外展開せざるをえない。また海外へ出ていく産業の後を埋める新産業が出てこなければ、技術開発は停滞する。国内では起業意欲が非常に減退しており、89年には戦後初めて廃業率が開業率を上回った。民間の技術開発支出も92年以降、戦後初めて減退しており、非常に憂慮される。

3.今後の政策

昨年暮れに630兆円の公共投資基本計画を発表した。今後は公共投資の質が問われる。産業の構造転換につながるように従来の予算配分を改め、新社会資本を整備すべきである。緊急円高・経済対策では技術開発や情報インフラを重視し赤字国債を出すと明示した。また阪神地区の復興とともに各都市の防災対策を行う必要がある。
円高メリットは過去に比べ相当速く国内に浸透しているが、高コスト構造を考えると中間財、資本財を中心にさらにコストダウンする余地がある。規制緩和は総論から各論の時代へ入った。具体論で規制緩和や取引慣行の是正を一層進めるとともに、独禁法、税法、商法等の見直しも含めた大きな制度改革を行う必要がある。
産業構造の転換に伴い雇用も流動化していかなければならない。事業革新円滑化法で雇用調整機能を柔軟に使えるようになったが、職業紹介の自由化、派遣労働の業種拡大等一層の規制緩和を要望している。


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