第107回景気動向専門部会(司会 遠藤理財部長)/6月6日

景気は一層予断を許さない状況に


景気動向専門部会では、最近の景気動向について、関係省庁ならびに日本銀行から説明を聞くとともに、景気の腰折れ懸念について意見交換を行なった。将来に対する不透明感が続くなか、生産、雇用面にかげりがみられはじめており、景気の先行きは一層予断を許さない状況となっている。以下は、懇談の概要である。

1.景気にかげりがみられる

機械受注、雇用、生産動向等の統計に予想以上に弱い数字が出るなど、景気にかげりがみられる。しかし、この背景には、予算の執行時期等からくる公共投資、住宅投資の空白といった一時的要因もあり、既に景気が腰折れしつつあると判断するのは早計である。いずれにせよ、円高、銀行の不良債権問題等に伴う将来に対する不透明感から企業マインドは悪化しており、景気の先行きは予断を許さない。

2.失業は最高水準に

失業率が 3.2%と過去最高となり、有効求人倍率が11カ月ぶりに減少するなど、景気が雇用に波及しつつある。雇用の悪化が所得の減少を通じて消費を縮小させ、これが一層の景況感の悪化をもたらす惧れが懸念される。

3.本格的な円高是正は期待薄

最近の協調介入の結果、当面、ドルの下値は固められたと思われるが、
  1. 1ドル=86円以上では本邦輸出企業によるドル売り注文があること、
  2. 本邦機関投資家による外国証券投資が積極化するに至らないこと、
等から本格的な円高是正を期待できる状況にない。他方、秋以降にドルベースで日本の経常黒字が縮小すれば、円安の方向に向かう可能性もある。

4.アメリカは景気後退のおそれ

雇用者数の大幅な減少がみられるなど、アメリカの景気後退が懸念される。アメリカ経済がソフトランディングできないと、日本からの輸出が抑制されるなど、日本の景気にも悪影響を与えると見られる。他方、アジア経済は引き続き、順調な成長が期待され、日本の輸出を下支えすると思われる。

5.描きにくい景気回復のシナリオ

先行き不透明感から設備投資主導の景気回復のシナリオは描きにくく、他方、所得の伸び悩みから個人消費も景気を引っ張る状況にない。当面は、円高の影響、不良債権問題を中心とする資産デフレの動向、阪神大震災の復興需要、アメリカ景気の動向等が注目される。


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