流通委員会企画部会(部会長 青木辰男氏)/6月15日

流通構造変革に対する取組みをメーカーから聞く


流通委員会企画部会では、流通分野の構造変革に関するヒアリングを行なっている。今回は、東レの飯島常務取締役とP&Gの新居専務取締役を招き、企業・業界としての取組みや今後の展望等について説明を聞くとともに、意見交換を行なった。

1.東レ 飯島常務取締役説明要旨

1.わが国繊維産業の抱える問題

わが国繊維貿易は、86年以降入超傾向が続いており、94年の入超額は138億ドルに達している。わが国繊維産業が空洞化を回避するには、川上から川下までトータルとしてのコスト競争力をつけることが課題である。
繊維製品の価格構成は、ワイシャツを例にとると、流通マージン(小売、商社、アパレル)が全体の73%を占め、製造業におけるコスト圧縮の余地は少ない。したがって、流通マージン節減が重要課題である。
わが国の繊維産業の生産・流通構造は非常に多重的であり、原糸製造業者から織物、染色、縫製業者、小売店に至る各段階において中小の卸売業者が介在している。これらの製造・流通に携わる人は総数約259万人であるが、このうち流通に携わる人が半分強の約133万人と非常に多く、流通の短略化が必要である。

2.繊維流通の課題

  1. 流通分野における経済的規制を緩和する必要がある。
  2. 返品制やリベート、委託販売、派遣店員制など商慣行を是正すべきである。
  3. LPU体制(原糸原綿、紡績、染色、アパレル等の各メーカーが協力して商品企画・開発を行う体制)を推進しなければならない。
  4. マーケットインの発想によるQR体制を強化する必要がある。
  5. さらに製販同盟等素材メーカーと小売業との連携強化や加工段階の海外シフト、マーチャンダイザーの育成等が求められる。

3.政策要望

政府は、規制緩和を徹底するとともに、中小小売業者の国際化、情報化、人材育成等の取組みに対し、支援を行うべきである。

〔意見交換〕
問:(1)LPUやQR等が導入された場合、卸機能は次第に不要となっていくのではないか。
(2)量販店からみた場合、QRに取り組む必然性はない。そもそも日本の場合、在庫水準が低く、QRを導入しても効果はないのではないか。
答:生産・流通における卸機能は徐々に縮小されるであろう。当社では、QR体制を導入した結果、各生産段階における在庫管理が可能となり、的確な生産管理・発注計画を立てることができるようになった。QR体制の採用はメーカーにとって一種の差別化戦略と考える。

問:PB商品への取組み状況は。
答:PB商品の生産量に占めるウエイトは非常に少ない。今後ともケース・バイ・ケースで取り組んでいきたい。

2.プロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト・インク(P&G)
新居専務取締役説明要旨

1.P&Gの経験

  1. アメリカ系外資企業として、1973年に日本市場に参入したが、最初の10年間は、消費者ニーズや習慣、そして流通システムへの理解不足から業績は低迷を続けた。
  2. しかし、グローバル戦略上の日本の重要性について、本社の理解を得た上で、(1)市場を創造・拡大する付加価値商品の導入によって流通パートナーに新たな利益を提供し、(2)機能の高い卸店を中心にネットワークを再構築したことで、現在の成功を得るに至った。

2.2000年に向けた主要な変化

  1. 近年、消費者は価値重視指向を強めており、P&Gの場合、主要ブランドの平均売価が2年前に比べて16%下がっているものもある。また、円高・内外価格差の是正圧力、高齢化への準備、不況に伴う将来の所得不安等の要因がこの傾向を強めている。一方で消費者は生活水準の低下を望まないため、今後低価格・高品質指向が一層強まると思われる。
  2. こうした変化を受けて流通システムは、消費者に価値をもたらさないコストを削除するとともに、より優れた価値を提供していくことが求められている。
    その対応のために、卸・小売の集約化、情報テクノロジーの活用、グローバル化がより一層進展すると思われる。

3.P&Gの対応

  1. かかる観点から、P&GではECR(効率的な消費者への対応)に取り組んできた。その主たる戦略は、店頭の品揃え、新商品の導入、プロモーション、そして補充の効率化である。
  2. ECRを成功させる為の原則は、まず消費者により高い価値を提供することに焦点をあわせること、そして、流通システム全体の効率改善、パートナーとの協働関係の確立、情報の共有化・テクノロジーの活用、ベストプラクティスの適用、変革の受容である。

4.政策提案

今後、業界としてECRを進める上では、グローバル化に対応できる物流コードの標準化、EDI基準の設定、透明度の高い取引や公正競争の促進等、流通システムの効率化に向けた政府の施策が必要である。最も重要な点は、全ての関係者が積極的に政策提言を行い、変革のスピードを加速していくことである。

〔質疑応答〕
問:アメリカにおけるロビンソン・パットマン法(価格差別を禁止)は戦略的同盟の障害とならないか。
答:同盟関係にあっても価格差別は行なっていない。

問:PL法への対応は。
答:欧米の経験も踏まえ、従来からフリーダイヤルのお客様相談窓口を設けており、特に新たな対応は必要となっていない。


日本語のホームページへ