国土政策委員会(委員長 増澤高雄氏)/6月16日

21世紀の国土を考える−新しい全総計画策定に向けた課題


昨年12月、政府の国土審議会において新しい全国総合開発計画の策定作業が開始された。国土政策委員会では、本年度中に同計画に対する経済界としての考え方をとりまとめることにしている。
6月16日には、国土庁の藤原事務次官、三井官房長はじめ幹部を招き、同審議会における検討状況を中心に説明を受けるとともに意見交換した。

 増澤高雄委員長

1.国土庁側発言

1.明るい将来を描く新しい全総計画を
−藤原事務次官挨拶

87年に閣議決定された四全総(第四次全国総合開発計画)は、
  1. 人口増加の鈍化、
  2. 近隣アジア諸国の著しい成長、
  3. 地球環境問題の世界的広まり、
  4. 阪神・淡路大震災の発生
など内外の諸情勢の変化を踏まえて見直しを行う必要が生じている。
わが国は、経済大国となった現在でも、依然として国民が真の豊かさを実感できない状況が続いており、新しい全総計画では、わが国の明るい将来を描く必要がある。
首都機能移転に関しては、6月6日に国会等移転調査会の第2次中間報告として、首都機能移転の範囲と手順、新しい都市づくりに関する考え方がとりまとめられ、実現に向け一歩前進した。同調査会の任期である96年3月までに、移転先の選定基準や移転時期の目標、移転後の東京のあり方について結論を得ることにしている。
阪神・淡路大震災の応急復旧に関しては、2度にわたる補正予算等により一応の目処が立ちつつある。現在、本格復興に向けた地元自治体の10カ年計画が検討されており、国としてそれをどう支援するかを考えているところである。

2.新しい全総計画の策定作業状況
−糠谷計画・調整局長

  1. 国土審議会の審議スケジュール
    昨年11月の国土審議会において、2010年を目標年次として、新しい全総計画を策定することが決定された。現在、国土審議会の下部組織である計画部会を中心に審議が進められており、本年秋までに基本的考え方をとりまとめ、来年度中に新しい全総計画を決定する予定である。
    計画部会では、既に(1)地球社会の展望と国土、(2)人口減少・高齢化と地域社会、(3)安全な国土の形成、に関する審議が行われた。
    今後さらに(4)経済構造変革と地域経済、(5)人と自然の共存と中山間地域の新しい位置付け、(6)21世紀におけるわが国社会の変貌、(7)社会資本整備の展望と課題、(8)21世紀における望ましい国土構造の方向について検討することになっている。

  2. 地球社会の展望と国土
    21世紀にかけて東アジアは著しい成長を遂げ、わが国にとって潜在的なマーケットとなることが期待される一方で、人流・物流面の国際競争力の低下や製造業の空洞化、さらに環境汚染拡大等の影響も懸念される。

  3. 人口減少・高齢化と地域社会
    国土庁の試算では、わが国の総人口は2007年、約1億2,800万人でピークを迎えることが予想される。地方圏においては、中枢・中核都市から1時間圏内への人口集中が進み、その一方で中山間地域の人口減少の幅が大きくなる。
    また高齢化については、三大都市圏においては高齢者の絶対数の増加、中山間地域においては青年・壮年層の減少というかたちで問題となってこよう。

  4. 安全な国土の形成
    わが国は地震等の自然災害の危険に常にさらされているうえ、太平洋ベルト地帯等の平野部に人口が集中するなど、他の先進諸国に比較して安全とは言えない国土構造を有している。
    阪神・淡路大震災を契機に、国民の地震に対する意識が高まった。今後講ずべき施策として、危険度や用途別の耐震基準の設定、都市圏におけるオープンスペースの確保に加え、分散型の国土構造の構築や、金融、行政などのバックアップ体制の強化が必要となろう。
    さらにリダンダンシーを備えた交通・通信基盤の整備も重要な課題である。

2.経団連側発言

  1. 各地域の経済連合会では現在、新しい全総計画に対する基本的な考え方や地域の位置付けについて検討している。
    まず、分散型の国土構造を実現するため、新国土軸の形成による地域間の連携や地域連携軸の形成による地域内交流の強化を図らなければならず、政策的な社会資本の先行投資が不可欠である。具体的には循環型の高速交通体系や高度情報・通信網の整備等が求められる。
    加えて、地域がそれぞれの特性を活かした国際交流を促進し、併せて新産業を育成するための拠点づくりに取り組むことも重要である。特に大規模拠点空港がその中核的な役割を果たすものと期待される。
    また自然災害等への備えとして、首都機能の移転や分散を具体的に進める必要がある。

  2. 分散型国土の実現と併せて、他の先進諸国に比較して遅れている都市部における社会資本の整備も怠るべきでない。

  3. これまで各交通インフラ別に縦割りで整備されてきた交通基盤整備のあり方を改め、全総計画の中で総合的な交通基盤整備計画をつくるべきである。その際、地域が何をつくるべきか選択できる仕組みにすることも重要である。

  4. 大規模拠点空港の整備を地域開発、産業振興の中心に据え、国と地方が一体となって複数の大規模拠点空港の整備に取り組むべきである。


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