新産業・新事業委員会企画部会(部会長 古見多香郎氏)/6月20日

ストックオプション制度導入の可能性を探る


新産業・新事業委員会企画部会では、ストック・オプション制度をわが国に導入する可能性について園田日興リサーチセンター主任研究員より説明を受けた。園田氏は「ストック・オプションを日本に創設するためには、株主の承認手続、利害関係のない者による運営、情報開示等の法整備などが必要だ」との認識を示した。

  1. ストック・オプションとは、役員や幹部社員が一定数の株式を一定の価格で買い取ることのできる権利を付与することである。権利行使時に取得時の価格を上回る分が利益として所有者に帰属する仕組みであり、アメリカでは大企業・中小企業を問わず多くの企業で採用されている。

  2. ストック・オプションには、税法上の区分により、
    1. 奨励型ストック・オプション
    2. 非適格ストック・オプション
    の2種類がある。
    前者は税法上の一定の条件を満たす必要があり、株主の承認を受けているものである。オプションの行使には10年を越えてはならず、行使価格は市場価格を下回ることはできないが、株式取得時には課税されず売却時にキャピタル・ゲインとして課税される。アメリカでは、所得税の最高税率は39.6%であり、キャピタル・ゲインの最高税率は28%であるため、キャピタル・ゲインとして課税されることで税法上は優遇されていると言える。しかし、奨励型ストック・オプションは、年間に行使できる額は権利行使価格ベースで年間10万ドルと定められているため、高額の報酬を支給することはできない。
    一方、後者は、税法上の特典が受けられない代わりに、多額のオプションを役員に付与できる特徴がある。付与した日より低い行使価格も設定できるが、そのような例はほとんど無い。

  3. わが国の現状では、ストック・オプション制度の導入は困難である。その理由として、
    1. 取締役への譲渡を目的とする自社株式の取得は認められず、従業員への譲渡を目的とする自社株式の保有も6カ月が上限であること、
    2. 株主総会特別決議の有効期間が6カ月しかないこと、
    3. 公開会社の第3者割当増資の場合、東証・証券業協会ルールにより2年間の継続所有を義務づけられているため、新株を発行・取得しても2年間は売却できないこと、
    4. 発行額が5億円を超えるときには有価証券届出書の提出が必要なこと、
    が挙げられる。

  4. 自社株取得によるストック・オプションの導入は、直ちに実現できる可能性が少ないため、創設のための方向性として、
    1. 今後の日本企業の経営において不可欠な制度であるとの根拠づけをすること、
    2. 株主の承認手続、利害関係のない者による運営、情報開示等、ストック・オプション導入により生じる可能性のある弊害を防止するための法規制の検討、
    3. 新株発行による導入の検討をする等、自己株式取得規制の緩和論と切り離して考えること、
    が必要である。


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