フィリピン投資セミナー/7月11日

新しい「アジアの虎」を目指すフィリピン


経団連では今年4月、豊田会長を団長とする訪ASEAN・ミッションをフィリピンに派遣した。ラモス大統領はミッションに対して、「日本からの投資を一層拡大してほしい」と要請する一方、投資誘致のために、シアソン外務長官とナバロ貿易工業長官を日本に派遣することを決定した。
両長官の来日を受け、国際協力プロジェクト推進協議会(会長 春名和雄氏)では、国際機関アセアンセンターや日比経済委員会等の協力を得て、フィリピン投資セミナーを開催し、フィリピン経済の魅力と投資環境の整備状況について、両長官から説明を受けた。また、当日はフィリピンでの事業展開について、日立製作所国際事業開発本部アジア事業開発部の塚田実部長からも体験談を交えて報告を受けた。

  1. 新しいアジアの虎
  2. ラモス大統領は、6月30日、国民に対して次のようなメッセージを発表した。「大統領任期の半ばを経過したが、現在ほどフィリピンの経済開発を進めるのに良い条件に恵まれた時期はない。われわれの最大の関心事は成長するか否かではなく、どのくらいの速さで成長するのかである。21世紀を目前に控え、現在の成長の勢いを今後とも維持できるかどうかが鍵となる。」
    かつてフィリピンは「アジアの問題児」といわれていたが、いまでは次の「アジアの虎」として内外において高い評価を受けている。
    投資先としてのフィリピンの長所は、
    1. 日本に近い、
    2. 天然資源が豊富、
    3. 人口構成が若い、
    4. 市場が成長している、
    5. 教育水準の高い熟練労働力に恵まれている、
    6. 新技術の習得に優れている、
    7. 英語が通じること
    などである。

  3. 日本との経済関係
  4. 現在フィリピンにとって日本は、アメリカに次ぐ第2の投資国であり、輸出相手国である。また、最大のODA供与国でもある。
    94年の両国間の貿易総額は75億ドルであり、日本の黒字基調で推移している。しかし、日本からの輸入品はフィリピン経済の工業化と輸出振興にとって欠かせないものである。フィリピンから日本への製品輸出は90年には前年比35.5%増、93年は同43.0%増となっており、第1次産品への依存度は着実に低下している。
    86年〜94年に日本からフィリピンに供与されたODA総額は64億 2,000万ドルであり、これはインドネシア、中国に次ぐ規模である。日本からのODAや直接投資は、フィリピンの工業化と輸出産業の育成に大きく貢献しており、経済開発に重要な役割を果たしている。94年の第19次円借款には11のプロジェクト融資が含まれ、合計9億 7,000万ドルに達した。今年7月10日には合計12億 6,000万ドルに及ぶ第20次円借款が調印された。この他、民間融資や日本輸出入銀行からの融資もフィリピン経済の開発に貢献している。92年の輸銀融資は 7,550万ドルであったが、94年には9億 4,180万ドルにまで急増している。

  5. ラモス政権下の政策運営
  6. ラモス大統領は、政治、経済、社会の各方面において積極的な改革に取り組んでいる。政権の基盤は安定し、議会との関係も良好である。反政府組織との対話も平和裡に進められ、治安も大いに改善した。
    経済改革の中心は自由化と規制緩和である。税制の簡素化、徴税事務の効率化とともに、広く薄く課税すべく抜本的な改正を行っている。財政支出の監査を厳格に行い、民営化の効果を最大限に引き出すように努めている。
    インフラ整備にも力を入れており、道路の総延長も2000年までには現在の2倍にする計画である。その他、地下鉄、鉄道、海運、航空などの交通網や情報通信網の整備を進めている。クラーク、スービックなど旧米軍基地跡地の開発を通じて、海外の投資家に合弁事業等の投資機会を提供している。観光開発も推進しており、日本、香港、台湾、その他東アジア諸国からの観光客の誘致に努めている。
    民間によるインフラ整備を進めるため、「1990年BOT法」を一部改正した。BOT方式により、93年末までに電力不足問題はほぼ解決した。従来の電力、水道、通信、輸送のほか、データベース、医療、教育、住宅の分野でもBOTを活用できる。
    経済開発を進めるにあたり、ラモス政権は成長の質を重視しており、政策の重点課題として、国民の生活水準の向上、環境保全、健康管理、社会福祉の充実等を掲げている。7月初めにラモス大統領は、「フィリピン・アジェンダ21」計画を発表したが、このなかで大統領は、92年にリオデジャネイロで開催された地球環境サミットの精神に即して持続可能な開発の重要性を強調している。これまでにも環境保護法を改正し、悪化が進む生態系の回復に取り組み、森林資源の伐採に対して規制を強化してきた。
    また、海外に出稼ぎに出ているフィリピン人からの本国送金は年30億ドルに達するが、「1995年海外移民労働者法」を通じて、在外フィリピン人の権利保護にも努力している。

  7. 自由貿易の推進と投資環境の整備
  8. フィリピンはAFTA(ASEAN自由貿易圏)を積極的に支持しており、ベトナムのASEAN加盟により、4億 3,000万人の市場が生まれることになる。また、94年以来、フィリピン南部、ブルネイ、マレーシア東部、インドネシアからなる東アジア成長地域(EAGA)の構築にも積極的に取り組んでいる。APECにおける貿易と投資の自由化を支持している。投資環境の改善に向け、外国為替管理を撤廃した。91年から関税を引き下げており、2003年にはASEAN全域が自由貿易地域となる。94年、議会はGATTウルグアイ・ラウンド合意を批准した。フィリピンはMIGAの加盟国であり、投資家リスクの軽減に努めている。
    外国企業等に対する土地のリース期間を75年間にまで延長した。フィリピンを製造拠点として再輸出を行う場合には、「輸出開発法」によって優遇措置を受けることができる。また、金融面では、外国銀行業務の自由化を進めるとともに、フィリピン中央銀行を設置し、またマニラとマカティにあった証券取引所をフィリピン証券取引所に統合した。変動相場制の下で通貨ペソの安定に努めている。


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