流通委員会企画部会(部会長 青木辰男氏)/7月11日

流通構造変革の現状について聞く


流通委員会企画部会では、流通分野の構造変化の実態を把握するため、ヒアリングを行なってきたところであるが、その取りまとめにあたって、東京大学の伊藤元重教授を招き、流通分野の構造変革の背景と今後の展開などについて説明を聞くとともに、意見交換を行なった。

  1. 伊藤教授説明要旨
  2. 1.流通構造の変化の要因

    現在、わが国の流通構造は著しく変化しつつあるが、その主な要因としては以下の3点が挙げられる。
    第1は、急速な国際化である。急激な円高によって日本の市場規模はこの10年間にドル建てで3倍に拡大し、製品輸入が急増している。
    第2の要因は情報処理・情報通信分野での技術革新である。流通業による情報分野の技術革新の活用は、キャッシュレス化や非線形価格化等、中長期的に大きな影響を及ぼすものと見込まれる。
    第3の最も重要な要因は、モータリゼイションの進展、都市への人口集中、小売業のチェーン化によって、小売業の競争が激化したことであり、リベート制やメーカーの価格維持行為、業種別流通等に象徴される伝統的な流通構造は変化しつつある。

    2.小売業の採るべき戦略

    こうした中で、小売業の採るべき戦略は、価格、品揃え、サービス等における差別化である。
    例えば、低価格化の場合、「略奪型価格破壊」は持続的でなく、小売業が積極的に垂直的統合、チーム・プロダクション、製販連携等を進め、価格を引き下げる業態としての「システム型価格破壊」が求められる。
    このように、小売業の差別化には上流の変化が不可欠である。低価格化が求められる一方で、高いサービスや価値も求められており、わが国の流通は、多様な業態化が進むことになろう。この中にあって、中小小売業もまた、ニッチ戦略を展開することで、生き残っていくことが可能になる。

  3. 質疑応答
  4. 経団連側:
    後継者難等によって中小小売業は経営が困難となっているが、既存の商店街は存続できるのか。

    伊藤教授:
    政策で後継者難を解決することは難しい。長期的に、高齢者や都市住民に配慮した商業集積をいかに整備していくかは、流通政策とは別途に検討する必要がある。


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