第108回景気動向専門部会(司会 遠藤理財部長)/7月5日

懸念される物価下落の景気への悪影響


景気動向専門部会では、最近の経済動向について、関係省庁ならびに日本銀行から説明を聞くとともに、物価の下落現象が企業・経済に与える影響について意見交換を行なった。
物価の下落傾向が続く中で、生産面の減少の兆しがみられ、一部に将来のデフレ懸念も出始めている。
以下は、懇談の概要である。

  1. 物価の下落傾向が鮮明に
  2. 円高に伴う輸入の増加、景気の低迷等を背景に、価格破壊ともよばれるような物価の下落傾向が鮮明となってきた。
    物価の下落が企業収益の悪化をもたらし、雇用の削減圧力を通じ、消費に悪影響を与え、これが景気を一層悪化させるといった悪循環が懸念されはじめている。
    こうした中、生産面では、5月の鉱工業生産指数が前月比−0.3%と2カ月連続のマイナスとなり、6月、7月もマイナスが予測されるなど、足踏み状態にある。
    また雇用面でも、5月の完全失業率は 3.1%と引き続き高水準にあるほか、有効求人倍率も0.63と一層低下している。
    他方、設備投資の先行指標といわれている機械受注の民需(船舶・電力を除く)では、4月は前月比14.9%と4カ月ぶりのプラスとなっている。
    今後、円高および株価、地価等の資産価格の低迷が続けば、企業や消費者のマインドが一層悪化し、経済全体がデフレ色を強めていく惧れがある。

  3. 価格体系の歪みも問題
  4. 貿易財については、国内価格が国際価格に収斂していく過程で下落する一方、土地、食料品、エネルギー等、競争にさらされていない非貿易財では価格低下が進まず、円高の影響もあり、内外価格差がむしろ拡大している。こうした貿易財と非貿易財の価格体系の歪みは、イギリス、ドイツ等ではみられず、わが国に特徴的なことであるが、放置すれば貿易財産業は一層の海外シフトを余儀なくされる。
    コストに占める人件費の割合の高い非貿易財産業の価格低下には、労働生産性の向上が必要であるが、この過程で、余剰人員の放出等による雇用問題の深刻化が懸念される。


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