なびげーたー

米国防衛産業への協力が必要

開発部長 池 誠


米国国防総省は最高水準の防衛装備を維持しつつコスト削減に必死となり、わが国に協力を求めてきている。わが国も協力体制を整備すべきである。

米国国防総省では冷戦終了に対応して、防衛予算は削りつつも世界最先端の装備は維持するため防衛装備調達の抜本的な見直しを進めている。

このため国防総省独自のスペックにこだわらず、また装備の調達先も米国の防衛産業だけでなく、米国の民需産業、さらに海外の防衛産業、民需産業に拡げ、わが国にも協力を求めてきている。

わが国はとくに電子部品や要素技術などの分野で世界の最先端にあり、米国防衛産業にとって魅力的な協力相手である。しかしわが国の企業は武器輸出三原則の制約により、日米共同生産はいうに及ばず、製品や部品の供給についても米国側の要請に応えることができないケースがある。

現在、武器輸出三原則の運用では、わが国からの輸出品のうち民生品としての使用実績がないものはすべて武器と見なされ、安全保障条約を締結している米国といえどもこれを輸出することが禁じられている。

さらに、武器と民生品との境界が不明確なため、米国に輸出する際に、些細な変更でも加えると、武器と判別され、輸出できなくなってしまう可能性がある。

日本企業にとっては民生品が武器に分類されれば、自由に輸出できず、市場が狭まってしまうため、米国との協力に消極的にならざるをえないという面もある。

実は、防衛技術に限っては1983年の中曾根・レーガン合意により米国との間では協力できるシステムはでき上がっている。しかし日米両政府間合意を得なければ実際の技術協力を進められず、また米国側の関心が政府の持つ防衛技術ではなく、企業の保有する技術である、などの事情から、日本企業の自発的協力が得られにくいため、技術移転が実質的にあまり進んでいない。

こうした日本側の消極的姿勢に米国は不満をつのらせ、何の見返りも得られない現状では、米国の重要技術を一方的に供与することは認められない、さらに従来わが国が米国からライセンスの供与を受け、それに基づいて国産してきた方式を認めず、日本は完成品を購入すべきである、といった強硬な主張も聞かれるようになっている。

最近、米国では、冷戦が終了したので、米国だけが高い防衛費を負担することをやめるとともに日米安保体制も全面的に見直し、日本および日本の周辺の防衛は関係国に任せるべきである、といった意見も散見される。

日米安保条約はわが国の安全保障の基本であるばかりでなく、東アジアの安定性を確保するためにも不可欠な存在である。日米安保を否定するこうした動きを本格化させないためにも、わが国が米国との緊密な防衛産業協力を進める必要があろう。


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