第10回経団連東富士フォ−ラム(担当副会長 関本 忠弘氏)/7月20〜22日

魅力ある日本の創造−21世紀の経済社会の基本構想


経団連では、21世紀の経済社会の基本構想を年内にまとめることとしている。第10回東富士フォ−ラムは、この基本構想づくりを共通のテ−マとして掲げ、豊田会長はじめ経団連の首脳26人が参加し、次の4つのテ−マについて活発な意見交換を行なった。
また、討議の間に、講演「21世紀の日本に期待されるもの」(サ−・ジョン・ボイド駐日英国大使)、「日本の政治・経済の構想」(田中直毅氏)が行われた。

討議1 創造的人材の育成

1.キックオフ・スピーチ ―末松 謙一副会長
世紀単位の時代変革の中で、求められているのは「個性や創造性に富んだ人材」であり、これまでの知識重視・画一的教育の見直しが必要である。
複眼的評価システム、複線的選択機会、家庭・地域の教育力向上との方向で教育制度を見直すべきである。採用システムの見直しなど、企業の責任と役割は大きい。

2.主な発言
今の教育に欠けているのは、社会性、つまり社会人としての教育である。社会的にバランスのとれた人材は家庭でしか育てられない。企業の立場からいうと、創造性と協調性が求められている。
教育の平等主義が浸透しすぎていることが問題である。能力ある学生には飛び級を認めるなど、エリ−ト教育を部分的にでもとり入れるべきである。
これまでの効率重視の考え方により、企業の採用が単線的になってしまったことが問題である。企業にとっては学歴ではなく学力が必要であり、学歴社会をなくさないといけない。企業内の書類から学歴の欄をなくすなどの企業の努力も必要ではないか。

討議2 新産業・新事業の創出

1.キックオフ・スピーチ ―大賀 典雄委員長
大企業が社内ベンチャーの活性化等ニュービジネスの育成に積極的に取り組むべきであり、そのためのインセンティブ、社内インキュベータ機能が必要である。
広く社会から起業家が出てくるためには「リスクへのチャレンジを賞賛する社会」へ変革しなければならない。

2.主な発言
新産業・新事業の展開のためには、持株会社制度、ストックオプション制度とそのための自己株式保有規制の緩和が必要である。他方、金融機関の果たすべき役割は大きい。これまでも、資金面、財務面での協力はしてきている。今後の課題として、必要な人材の発掘・斡旋、顧客の紹介など規模拡大のための支援策を模索中である。
経験によると、本業に近い分野での新規事業は、成功する確率が高い。これは、技術的シーズを既に備えている、既存のマーケット(顧客)を利用できるなど、社内インキュベーション機能が働くためである。
社内ベンチャ−の課題として、親企業の支援と新規事業の自立のバランス、サンセット方式の導入、インキュベーション機能の社内蓄積、社内ベンチャ−に適した人材の育成、成功報酬ならびに敗者復活の制度などが挙げられる。

討議3 豊かな国民生活の実現と魅力ある国土の建設

1.キックオフ・スピーチ ―今井 敬副会長
現在の景気は、従来型の景気対策では回復できない状況にある。その原因は、戦時中から続いている官民一体のシステムが疲労していることにある。日本経済再生のためには行革の推進と規制撤廃・緩和しか残されていない。経団連として、業界の既得権益に踏み込んで積極的に行動していくべきである。また、資産デフレ問題の解決、とりわけ不動産の流動化が重要である。

2.主な発言
当面の景気問題を解決することが将来の日本につながる。公共投資については、21世紀にふさわしい新社会資本に思い切って配分する必要がある。税制については、法人税負担の引下げ、地価税の撤廃とともに、地方税である事業税、固定資産税の見直しが必要である。
規制緩和を実施すれば、企業にも相当の痛みが出るが、民間の力で経済が自律的に活性化できるよう、経済界自らが率先して取り組む必要がある。また首都移転は、小さな政府、規制緩和をもたらす効果があり、最優先課題として推進すべきである。
取り組むべき課題は明白だが、政治のリーダーシップがない。早期に総選挙を行うというのもひとつの考え方である。

討議4 新しい国際秩序の確立とわが国の対応

1.キックオフ・スピーチ ―米倉 功副会長
世界、地域の貿易・投資自由化のため、WTO、APECなどの場で日本が果たすべき役割は大きい。国際通貨問題では、ブレトン・ウッズ体制は制度疲労を起こしており、複数基軸通貨体制、円の国際化が必要である。また、今後の日本の経済協力については、民間、NGOとの連携、ならびに役割を重視するとともに、企業からの技術者の派遣など人材面での貢献が必要である。

2.主な発言
国際通貨体制については、各国の金融政策の協調により、フレキシブルなバンドに誘導するよう努める方が相場の安定を図れるのではないか。円の国際化については、何よりもまず日本の金融市場の自由化が不可欠である。
諸外国は日本の市場の閉鎖性を問題視している。貿易黒字解消のため、生産拠点の海外進出など、企業レベルで黒字削減努力をする必要がある。
国際社会における日本の人的貢献が求められている。経団連でも、経済協力に関わる企業の人材を発展途上国や援助機関に派遣するプログラムをスタ−トさせようとしている。


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