APEC高級事務レベル会合に関する説明会(座長 立石 信雄氏)/7月25日

APEC大阪会議の準備大詰め


経団連では、札幌でのAPEC高級事務レベル会合(SOM、7月4〜7日)の議長を務めた瀬木APEC担当大使を招き、11月の閣僚・首脳会議(於 大阪)に向けた日本政府の対応と準備状況について説明を聞くとともに懇談した。また、7月14〜15日に開催されたPBF(太平洋ビジネス・フォーラム)東京会議の模様と今後の日程について、立石PBF日本代表と近藤伊藤忠商事政治経済研究所長から説明を聞いた。

  1. 瀬木APEC大使説明要旨
    1. 11月の閣僚・首脳会議(於 大阪)に向けて、これまで3回高級事務レベル会合を開催した。今後2回会合を開く予定である(9月=香港、10月=東京)。大阪会議そのものの重要性に加えて、こうした準備段階でのメンバー間の間断のない協議、意見交換はAPECの結束を強める上で有益である。

    2. 昨年のボゴールでの首脳会議で貿易・投資の自由化が宣言され、今年はその具体化が求められているが、それに加えて、APECの自由化計画がアジア太平洋地域のダイナミズムを一層強め、域内のコミュニティ意識を高揚させ、さらには世界経済全体に自由化を拡大するという壮大な構想の下に準備を進めている。

    3. アジア太平洋の地域協力構想は60年代に逆上るが、長い間学者の構想でしかなかった。その理由は、冷戦時代には、各国が安全保障に大きな関心を抱いていたこと、ASEANが先進国のやることに猜疑心を抱いていたこと、域内の先進5カ国(日本、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)と途上国との格差が極めて大きかったことなどである。

    4. 89年にAPECが発足した直接の契機は、欧州や北米で地域取決めが成立し、アジア太平洋地域だけが取り残されるのではないかという危機感が高まったことである。
      しかし、より大きな背景として、この地域の経済が急速に発展するともに、域内の相互依存度が大いに向上したことがある。

    5. APECは、アジアのダイナミズムと開放的な経済を阻害する諸障害を除去する役割を担っているが、その原則は大きく4つある。第1は、アジアの多様性に考慮すべきこと。第2は、域内のダイナミズムを生かし、その促進を図ること。第3は、域内の連帯感、仲間意識の形成に資すること。そして第4は、世界経済全体の自由化につなげること(APECの力で域外のブロック化を阻止すること)。
      こうした原則に基づいて、APECでは、自主的かつ、個別の行動を自由化の基礎として、各国の取組みを奨励しなければならない。ただし、各国がばらばらに自由化を推進してよいということではなく、共通のルールを設ける必要がある。その際、互いの経済、制度等を学び合い、よく相談してルールを創っていくことが肝要である。
      APECでは、集団的行動(Collective Action)を重視している。主な対象は、税関手続きの簡素化・共通化、基準認証の相互承認・共通化、関税のデータ・ベースの共有化等、実際にビジネスを行う上で障害要因となっているものである。
      APECで自由化に取り組むにあたっては、相互支援が必要不可欠であり、昨年日本が提案した「PFP (Partner for Progress) 」構想は有益である。
      APECは、世界の貿易・投資の自由化を促進するために大きな役割を果たすが、APECが達成した自由化の成果を、MFNベースで域外にも均てんするか否かについては、メンバー間で議論中であり、結論は出ていない。また、APECに紛争処理機関を設けるか否かについても、メンバー間に賛否両論があり、検討中である。
      APECという枠組みの中で、各国がどのような具体的アクションをとるのかが問題である。その点、残念ながら日本は、まだ十分な行動を起こしていない。APEC大阪会議の成功は、日本自身が自由化、規制緩和をどこまでやれるかに懸かっている。

  2. PBF東京会議についての報告
    1. PBFでは、昨年の報告を踏まえて、現在自由化のプライオリティ付けや具体的なタイムテーブルを検討している。

    2. 7月14〜15日の東京会議で出た結論として、第1に、今年の報告書はパンチの効いたわかりやすい内容にする。当面実施が求められる重要度の高い項目から順に記述し、グラフィックも多用する予定。
      第2に、大阪会議にPBF報告ができるだけ生かされるよう、会議の1カ月前に報告書を提出するとともに、9月の高級事務レベル会合特別会合(於 香港)で報告書の内容を説明する予定である。

    3. 今後の作業日程は、8月中旬までに第2次稿を取りまとめ、9月1〜2日のPBF会合(於 カリフォルニア)でこの草稿を基に議論する。この議論を踏まえて、9月4日の週に最終報告を完成させ、9月18日の週に日本の首相に提出する予定である。

  3. 懇談
  4. 経団連側:
    経団連でAPECに向けて意見書を取りまとめたが、その趣旨は、日本が先頭に立って規制緩和をはじめとする自由化に取り組むべきというものである。日本政府部内で、そのための具体的な動きは出ているか。

    瀬木APEC大使:
    APECにおける日本の役割は、
    1. 議長国としての取りまとめ(日本が構想を出して、メンバーをひとつにする)と
    2. 日本自身が自由化、円滑化等に取り組むこと、
    である。水際と国内の両方で、すぐに改革を始めなければならない。あと4カ月しかないが、やろうと思えばやれる。
    規制緩和については、5カ年計画に入っていても、目標だけしか出ていなくて具体性に欠けるのや、もっと明確化しなければならないものもある。また、取りこぼしもある。APECを契機として、日本国内の規制緩和に是非積極的に取り組んでいきたい。それが日本自身のためにもなる。


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