北アフリカ委員会総会(委員長 室伏稔氏/共同委員長 渡辺英二氏)/8月10日

エジプト、アルジェリアを中心とする北アフリカの情勢について


北アフリカ委員会では、1995年度定時総会を開催し、1994年度事業報告・収支決算、1995年度事業計画・収支予算を審議、承認した。
当日は、審議に先立ち、一時帰国中の堂道駐エジプト公使および外務省中近東アフリカ局中近東一課の藤原地域調整官より「最近のエジプトおよびアルジェリアの情勢と今後の見通し」について説明を聞いた。以下は堂道公使、藤原地域調整官の説明の概要である。


室伏 稔委員長 渡辺英二共同委員長

  1. エジプトの情勢について
    ―堂道公使
  2. 1.ムバラク大統領襲撃事件について

    今年6月のエチオピアでのムバラク大統領襲撃については、イスラム原理主義者によるものとの見方が強く、かつ複数の国が関与しているとの疑いがもたれているが、不明だ。エジプト国内の取締りが厳しいため、国外で襲撃するに至ったものと思われている。こうした事件が生じたからといってエジプトが政治的に不安定だとは必ずしもいえない。

    2.経済再建への動き

    エジプトの債務救済のため、わが国は債務の50%削減に応じた。インフレ率が低下するなど経済が表面上順調に推移していることや、民営化によって大量の失業が発生すれば社会不安につながる、等の理由から政府は世銀・IMFが主張する経済構造調整を受け入れていない。

    3.わが国との関係

    日本企業はエジプトの官僚的な体質に辟易しているやに聞いているが、エジプト政府は苦情処理委員会を設置するなど諸外国企業の意見を吸い上げる努力を行なっている。今後日本企業のエジプトに対する見方が好転することを期待したい。わが国政府としても今般輸出保険を再開したところである。また、スエズ運河に橋を建設する計画についても、今年中にJICAによる調査が終了する予定であり、着実に進展している。

  3. アルジェリアの情勢について
    ―藤原地域調整官
  4. 1.政府とFISの対立

    92年1月の大統領選挙でイスラム原理主義政党FISが大勝した。しかし、軍事政権はこの選挙を無効とし、さらには国家非常事態宣言によりFISを非合法化した。その後、治安が悪化し現在までに約1万人が死亡したと報じられている。特に93年9月以降は外国人までもターゲットにされており、外国人犠牲者は80人にのぼる。94年1月に安全保障高等評議会の指名によりゼルーアル大統領が就任した。同大統領は3年間を正常化するための移行期間とし、テロ制圧を緊急課題として取り組んできたが、この力による政策は対立を激化させるという悪循環を生んだ。

    2.政治対話への動き

    昨年8月以降、政府は路線を変更し、テロの制圧だけでなく政治対話を積極的に試みた。FIS議長による暴力行為の停止宣言がなされ、また、政府もFIS指導者の釈放、政治活動を許可する等提案を行ったが、武装イスラム集団(GIA)の抵抗にあい、この提案は受け入れられなかった。政府側も軍部がこの政治対話に消極的であったため、結果、1年足らずで対話は失敗に終わった。

    3.大統領選挙に向けて

    ゼルーアル大統領の合法性が問われていたことから、大統領は95年12月までに選挙を行うとの声明を発表した。新聞報道では11月の中旬に実施するとされている。今年4月に選挙法を改正した。内容は憲法重視、暴力停止・否定、立候補する場合には48県中25県以上から7万5000人以上の支援を必要とすること、などとなっている。ゼルーアル大統領およびシビリアンであるスイフィー氏の出馬が予想されている。

    4.わが国政府の考え方

    外務省としては、邦人の人命を守ることを最優先し、93年11月、94年3月、8月と3回にわたる退避勧奨を出している。現在の在留邦人数は50人前後である。
    アルジェリアは、わが国にとって有力なプラント輸出市場であり、北アフリカの最重要国として位置付けている。G7各国もアルジェリア支援の姿勢を崩していない。IMFは94年に10億ドルのスタンド・バイ・クレジットを供与し、本年には18億ドルのクレジットの追加供与を決定している。わが国も94年に400億円を超える公的債務のリスケジュールに応じた。わが国としては今後ともアルジェリアとの関係を強化していくつもりであり、治安の回復をまって次の支援を検討するつもりである。


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