ASEAN地域フォーラム・ASEAN拡大外相会議に関する説明会/8月24日

アジア太平洋地域の政治・安全保障協議が本格化


アジア委員会では、ブルネイでのASEAN地域フォーラム(8月1日)とASEAN拡大外相会議(8月2日)に出席した外務省アジア局地域政策課の水谷課長と総合外交政策局安全保障政策課の門司課長を招き、両会合の模様について説明を聞くとともに懇談した。(座長:飯島アジア委員会企画部会長)

  1. 核実験問題で議論沸騰
    ―水谷地域政策課長説明要旨
    1. 7月28〜29日、ASEAN外相会議が開催された。この会議の焦点は、「ASEAN10(東南アジア10カ国からなるASEAN)」実現の展望が開けたことである。ベトナムが正式にASEANに加盟し、従来からのラオスに加えて、新たにカンボジアがオブザーバーの資格を得た。
      また、ゲストとして会議に参加したミャンマーが東南アジア友好協力条約に加盟し、遠からずオブザーバーになりたいとの意向を表明した。
      AFTA(ASEAN自由貿易地域)における関税引下げを2003年までに達成することが再確認された。今後具体的な対象品目を最終的に選定し、12月14〜15日開催予定のASEAN首脳会議(於 タイ)での合意を経て、95年1月より新計画を実施することになっている。
      この他、南沙諸島、北朝鮮の核疑惑、核実験再開等の問題が議論された。

    2. この会議を踏まえて、ASEAN7カ国にダイアローグ・パートナー7カ国・機関(日本、アメリカ、カナダ、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、EU)を加えて、ASEAN拡大外相会議(以下PMC)が開催された。全体会合では、ユーゴ情勢、核実験、ミャンマー情勢等の問題を討議した。核実験問題では、オーストラリア、ニュージーランド(以下NZ)がフランスを名指しで非難するなど議論が沸騰した。河野外相は、世界で唯一の被爆国の立場から、核不拡散条約の無期限延長の際に核保有国に委ねられた信頼を傷つけるものとして強く反対し、各国から賛意を得た。
      日本とASEANとの個別会合では、両者の友好関係が確認された。
      アジア・欧州間のサミット開催が議題に上り、95年3月上旬を目処に、今後日程を調整することになった。

  2. ARFの将来展望
    ―門司安全保障政策課長説明要旨
    1. アジア太平洋地域の政治・安全保障を協議する枠組みとしては、従来PMCがあったが、93年のPMCでASEAN地域フォーラム(以下ARF)の設立が合意され、94年第1回会合が開催された。参加メンバーは、ASEAN7カ国、日本、アメリカ、カナダ、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、EU、ロシア、中国、パプア・ニューギニア、ラオス、カンボジアの19カ国・機関であり、外相間での自由な意見交換が原則となっている。

    2. 今回の会合では、ARFの将来展望と今後の具体的な進め方について合意が得られた。ARFは広義の安全保障問題に関するオープンな対話と協議の場であり、1信頼醸成の促進、2予防外交の展開、3紛争へのアプローチの充実という3段階に沿って漸進的に推進することになった。

    3. ARFが紛争解決にどこまで直接関与するかについては、意見が分かれているが、信頼醸成に重点を置き、その雰囲気づくりを積極的に行なっていくために、各種レベルでの政治・安全保障対話を強化することや、任意ベースで毎年防衛政策に関する文書を提出することなどが合意された。

    4. 残された問題は、新規加盟国の扱いである。イギリスとフランスはEUとしてではなく、個々の国としての参加を希望しており、インド、モンゴル、北朝鮮、チリも名乗りをあげている。次回議長国のインドネシアが作成する基準案に基づいて、次回会合で議論される予定である。

    5. 個別の問題では、南シナ海、朝鮮半島、カンボジア、核不拡散について意見交換が行われた。

    6. ARFは、日本の安全保障政策の観点からも重要なフォーラムである。
      従来の日米安保と自衛力整備という2本柱に加えて、今後地域レベルでの安全保障がそれらを補完するものとして重視されるだろう。

  3. 質疑応答
  4. 経団連側:
    中国とASEANの関係に変化はあるか。EAECについて進展があったか。

    外務省側:
    ASEANにとって中国は潜在的な脅威である。そのためASEANを中心とする東南アジアは最近結束を強めているが、冷戦下のような厳しさはもはやない。一方改革開放を推進中の中国としては、ASEANとの良好な関係を今後も維持・発展させるために、無用の警戒心を与えないことを政策の原点にせざるを得ない。
    EAECについては今回のASEAN外相会議で早期創設を目指して推進すると合意されたが、マレーシア以外のASEAN諸国は、むしろAPECを重視しており、APECにおける貿易・投資の自由化にも積極的に対応している。

    経団連側:
    ASEANに日、中、韓を入れて非公式な話し合いが行われたと聞くが、具体的に何が討議されたのか。オーストラリア・NZ間のCER(豪州・NZ経済緊密化協定)とAFTAのリンケージが議論されているようだが、現状はどうか。

    外務省側:
    昨年に引き続き今年も、ASEANと日、中、韓で非公式の昼食会を開催した。アジア・欧州サミットの内容、日程等を話し合った。その結果12月にスペインで準備会合を開くことが合意された。この昼食会は制度的なものではなく、EAECとの関係もない。
    AFTAとCERの連携については、本年3月にASEANとオーストラリア、NZの間の高級事務レベル会合で議論された。AFTAの最終的な内容が未確定であるため、協力可能な分野について意見交換するに止まった。


日本語のホームページへ