経営・会計委員会(委員長 藤村正哉氏)/7月26日

会計・開示問題を中心に証券市場をめぐる問題について大蔵省証券局長と懇談


経営・会計委員会では、大蔵省証券局の日高局長、山本監理官、大西企業財務課長を招き、証券市場をめぐる最近の諸問題および外貨建取引等会計処理基準の改訂をはじめとする企業会計・ディスクロージャーの最近の動向につき説明を聞いた。
経営・会計委員会では、企業会計審議会の審議に対応して検討を進め、経済界の考えを審議に反映するよう努めている。今般、同審議会において、16年ぶりに行われた外貨建取引等会計処理基準の見直しは、企業の急速な国際化の進展を踏まえ、経団連がかねてから要望していたものである。以下は大蔵省側の説明の概要である。

1.証券市場をめぐる最近の諸問題

  1. 日銀による金利の低め誘導が行われるとともに、米国との協調介入の実施によって円高是正へ一歩踏み出したこと
  2. 不良債権問題の処理に向けて具体的な進展が見られること
  3. 6月末の「緊急円高・経済対策の具体化・補強を図るための諸施策」においてみなし配当課税の凍結等の措置が打ち出されたこと
等により、7月に入って証券市場には若干の明るさが見られるようになったが、市場活性化に向けて引き続き以下の課題に取り組んでいる。

(1)自己株式の買入消却の推進

経団連の積極的な働きかけもあり、自己株式の買入消却のネックとされるみなし配当課税を当面、凍結することになった。関係法案がいつ国会に提出されるかについて確たることを言う状況にないが、12月決算会社にも次の定時株主総会で対応したいとする企業があることを考えると、できるだけ早めに立法措置がなされるようお願いしているところである。
買入消却は、株式の過剰感をやわらげるとともに、株主に目を向けた経営姿勢を示すという意味でも重要であり、制度の活用をお願いしたい。

(2)フロンティア市場の創設

21世紀を担うベンチャー企業をバックアップするべく、従来の店頭市場の特則として「フロンティア市場」が7月中旬に発足した。新しい市場の発展を期待したい。この関係で、この9月には証券取引審議会公正取引特別部会を開催し、配分ルールの取扱等について審議をいただく予定である。

(3)個人投資家の参加しやすい環境整備

株主に目を向けた経営という観点からも投資単位の引下げは重要な課題であり、単位のくくり直しや株式分割をお願いしてきているが、さらに現在、ミニ株式取引について、日本証券業協会で検討いただいているところである。

(4)時価発行増資に係わる規制の見直し

時価発行増資に係る規制については、企業の財務戦略の選択肢の拡大が必要という基本的考えのもとに緩和の方向で検討を進め、今年度中に方針を出したい。その際、株主や投資家に目を向けた企業については何らかのメルクマールで時価発行増資を認めていくといったことができないか勉強している。

(5)社債の流通市場の整備

社債発行については商品の多様化が進み、また来年1月から適債基準ならびに財務制限条項の設定の義務づけが撤廃されることとなっており、発行市場の整備はほぼ完了した。残された問題は、流通面の制度整備であり、今般、証券局長の私的研究会として社債受渡し・決済制度研究会を設置し、現行制度の見直しおよび改善の方向について検討を行うこととした。

(6)デリバティブ取引への対応

デリバティブ取引をめぐっては、本年2月のベアリング証券の事件を契機にIOSCO(証券監督者国際機構)においても検討が進められている。この問題については取引自体を直接抑えこむのではなく、リスク管理とディスクロージャーの充実を図るという国際的な流れに沿って積極的に取り組んでいきたい。この問題は本年10月の改選後の新しいメンバーで構成される証券取引審議会において取り上げていただければとの腹づもりでいる。

2.会計・ディスクロージャーをめぐる動向

(1)外貨建取引等会計処理基準の改訂

企業会計審議会では、昨年3月から外貨建取引等会計処理基準の見直しについて検討を始め、本年5月26日に同基準改訂の報告書を取りまとめた。基準は、(1)外貨建取引の換算基準、(2)在外支店にかかる財務諸表項目の換算基準、(3)在外子会社等にかかる財務諸表項目の換算基準から成っており、特に、在外子会社等の財務諸表の換算基準では、現行の修正テンポラル法では実務上の対応が困難とする経団連の指摘等を踏まえ、決算日レート法を採用することとした。改訂基準は来年4月1日以降開始する事業年度から適用するが、それ以前に開始する事業年度の適用も可とする。

(2)デリバティブに係わるディスクロージャーのあり方の検討

デリバティブ取引についてどのようなディスクロージャーが有用か十分な検討を行うべく、経団連のメンバー企業の方々からも参加を得て、実務専門家等から成る研究会を本年4月より開催している。これまでに、デリバティブ取引の現状、諸外国の開示例について委員から報告を受けた。

(3)開示制度の改善

開示制度に係わる規制緩和策として、(1)発行登録制度の利用適格要件の緩和、(2)参照方式による有価証券届出書の利用適格要件の緩和、(3)ブックビルディング方式の利用に係わる訂正届出書の即日効力発生等を本年7月1日から実施した。
また、適債基準および財務制限条項の設置の義務づけが撤廃されることに伴い、必要な開示の充実を図ることとし、経団連とも相談の上、(1)リスク情報の開示の充実、 (2)会社が対処すべき課題の開示、(3)取得格付の開示、(4)財務上の特約の開示を来年1月1日から実施することとした。

(4)IOSCO第1作業部会における検討状況

第1作業部会では、(1)外国企業が各国の国内基準に代えて選択的に準拠できる会計基準として、国際会計基準を受け入れる可能性、(2)外国企業が各国の国内基準に代えて選択的に準拠できる開示基準の作成について検討を進めている。
引き続き経団連の意見も聞きながら、第1作業部会の検討に対応していきたい。


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