流通委員会(委員長 前田勝之助氏)/9月8日

流通分野を中心とした規制緩和の推進について


流通委員会では、流通分野の構造変化に関し検討を進めているが、この取りまとめにあたって、大阪大学の大田弘子客員助教授を招き、流通分野を中心に、規制緩和推進上の課題について説明を聞くとともに、意見交換を行なった。併せて、当日は流通構造変革に関する意見書案、流通分野の規制緩和要望案について審議した。

1.大田助教授説明要旨

  1. 市場の失敗に対応する方法はいろいろあるが、日本は、これまで業者を直接規制するという最も高コストの方法をとってきた。しかし、現在、弊害は随所に現れ、規制緩和の推進は不可避の課題となっている。

  2. 最も必要なことは、新しい技術や発想を持った事業者が、リスク・テイクできる市場の整備である。そのため中小企業政策の根本的な変革が必要である。

  3. 流通分野においても、所得再配分型の中小企業政策は、高度成長期には意味をもったが、今日では、起業家精神に乏しい中小企業の保護と、大企業を含めた既存の序列の固定化につながっている。

  4. こうした政策は、中小企業は小さいから弱いという考え方に基づくものである。しかし、中小企業は機動力の発揮や事業の革新可能性も孕んでおり、一概に弱者ではない。ただし、リスクの分散が難しく、失敗時の対応が困難であることから、今後、リスク・テイクする中小の事業者を支援する方向に政策を転換していく必要がある。

  5. 行政改革委員会の規制緩和小委員会では、規制緩和推進計画に盛り込むべき項目を検討し、7月27日には40項目の論点を公開した。流通分野では、
    1. 大店法の見直し、
    2. 酒類小売販売業免許基準の緩和、
    3. みりん・料理用酒の食品小売業での販売自由化、
    4. 酒税の均等化、
    5. たばこ小売販売の自由化、
    6. 化粧品・医薬品の再販指定品目の早期廃止、
    7. 品目を限定した医薬品販売の規制緩和、
    を取り上げており、今後さらに議論を踏まえて最終的要望を行う。

  6. 規制緩和は痛みを伴うが、経済界が真剣に取り組めば実現不可能ではない。その意味で、規制緩和への取組みは、経済界の試金石である。

2.意見交換

経団連側:
国の規制の廃止に伴い、地方の上乗せ・横だし規制が懸念される。
大田助教授:
まず国の不要な規制を廃止することが必要である。上乗せ・横だし規制を懸念して規制を残すべきではない。

経団連側:
消費者団体の姿勢はどうか。
大田助教授:
組織の集合体が多く、農業者等、生産者の利害を主張することがある。真に消費者の立場に立った明確なコスト意識と政策分析に基づく発言が望まれる。

経団連側:
経済界の中にも規制緩和については、総論賛成、各論反対が依然多いが、時間をかけても実行していく必要がある。


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