農政問題委員会(委員長 伊藤助成氏)/9月18日

農業・農政のあり方について抜本的な見直しが必要


政府は、94年10月の『ウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策大綱』において、1961年に制定された農業基本法の見直しに着手するとしており、内外の諸事情の変化を踏まえ、農業・農政のあり方を抜本的に問いなおすことにしている。そこで農政問題委員会では、農林水産省大臣官房の田原企画室長を招き、農業を巡る最近の情勢につき説明を聞くとともに懇談した。当日は、併せて農政分野の規制緩和要望案につき審議し、さらに森林部会でとりまとめた「持続可能な森林経営の効率的な実現を求める」について報告を受けた。

  1. 田原企画室長説明要旨
    1. 農業をとりまく諸情勢の変化

      国民の食生活の変化や円高の進行、輸入自由化等により農産物輸入が急増し、供給熱量自給率は92年度で46%にまで低下した。

    2. 農業生産構造の変化

      近年、耕地面積は減少し、耕作放棄地も増加している。農業労働力も減少を続け、高齢化の進行もあり農業生産基盤は脆弱化する傾向にある。
      他方、緩やかながら農地の賃借を中心に大規模化も進みつつあり、法人化等により経営能力強化に取り組む動きもある。

    3. 農産物価格安定制度と内外価格差

      多くの農産物については、再生産の確保と物価の安定を図る観点から、各種の価格安定制度が設けられてきた。生産性向上や需給事情の変化により、近年行政価格は抑制的に推移してきたが、依然としてわが国の食料品価格は海外に比べ平均3〜4割程度割高になっている。その背景には (1)為替レートの変動、(2)国土条件の制約、(3)人件費、地価、エネルギー価格の高さなどがあることも留意する必要がある。

  2. 意見交換
  3. 経団連側:
    農業の健全な発展のために国が講ずべき施策について論じるべきである。
    田原企画室長:
    その通り。わが国農業をどこまで支えるのか、どの程度の財政負担ならば受け入れられるのかという点について国民のコンセンサスを得る必要がある。農業が果たしている公益的機能等も含め、広く議論してもらいたいと考えている。

    経団連側:
    92年に農林水産省がとりまとめた「新政策」において、将来育成・確保すべき農業経営体の姿が示されたことを踏まえ、その経営体に集中的に対策を講じるなど、一定程度の食料生産を確保するための農業のあり方について国民のコンセンサスを得る必要がある。
    田原企画室長:
    同感である。丸抱え式の農業保護では国民のコンセンサスは得られないだろう。農業者と国民双方が納得できるやり方、水準を探っていく必要がある。


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