中国委員会(委員長 三田勝茂氏)/9月27日

シンガポール・蘇州工業都市セミナーを開催


シンガポール政府と中国政府は現在、中国江蘇省蘇州において「シンガポール・蘇州工業都市」の共同開発プロジェクトを進めている。同プロジェクトは、改革開放を進める中国にシンガポールをモデルとする新しい工業都市を建設し、各種の優遇措置により海外からの投資を積極的に誘致しようという計画である。今年2月、経団連ミッション(団長:豊田会長)がシンガポールを訪れた際にも、同プロジェクトへの日本企業の積極的な参加を求められた。そこで、同計画への支援の一環として、シンガポールからジョージ・ヨー情報芸術大臣兼保健大臣ほかを招いてセミナーを開催し、同プロジェクトに関する説明を聴いた。当日は、リム・チン・ベン駐日シンガポール大使と徐敦信駐日中国大使も出席し、同プロジェクトへの支持を訴えた。

 三田委員長

  1. 中国の都市運営に対する協力の可能性
    ─ジョージ・ヨー大臣発言要旨
  2. シンガポールは70年代後半まで中国と一定の距離を置いてきた。リー・クアン・ユー首相の率いる与党人民行動党(PAP)は国内の共産主義勢力の一掃に力を入れ、毛沢東の著作は発禁処分としていた。シンガポールが中国との関係を正常化したのは1990年のことである。
    92年2月、トウ小平氏は中国南部都市を巡回し、「中国はシンガポールに学ぶべきだ」と発言した。これには我々も非常に驚いたが、その年だけでも中国から約400 のミッションがシンガポールを訪れた。93年にはリー・クアン・ユー上級相が、新都市建設に関する共同プロジェクトを提案した。シンガポールの都市運営に関する経験を中国の蘇州に応用しようというものである。94年2月、ゴー・チョク・トン首相と李鵬首相が北京で同プロジェクトに関する政府間合意に調印したのである。
    改革開放を進める中国は、過去16年間に目覚ましい経済成長を遂げており、各地の都市は競って発展を続けている。これらの都市の人口は200 万〜800 万であり、シンガポールの300 万人と同じような規模である。シンガポールは12億人の国家運営に対して有益なノウハウを提供できないが、中国の地方都市に対しては、これまでの経験を伝授できると思う。

    中国各都市所在地の地図

  3. 蘇州工業都市の概要
    ─リム・チー・オン蘇州工業都市開発会長発言要旨
  4. 蘇州は、中国の二大経済発展地域である沿海経済地帯と揚子江経済地帯が交差する場所に位置する。上海の西方80kmのところにあり、上海、北京、天津、杭州、南京などの大都市と、港、国際空港、鉄道、高速道路、水路で結ばれている。蘇州工業都市は、中国の大都市だけでなく、アジア太平洋地域の市場にも開かれている。既に4,500 社の外資系企業が蘇州で事業を行っており、特に繊維、電子、機械、化学などの製造業のみならず、保険、運輸、通信などのサービス業の分野においても産業基盤が確立されている。
    蘇州では10の大学、61の科学技術研究所、81の職業訓練機関、9の成人教育機関から優秀な人材が輩出されており、労働人口の60%が工業とサービス業に従事している。
    蘇州工業都市は、単なる工業団地ではなく、住宅や商業施設のほか、学校、病院、ゴルフ場、マリーナなども含まれる70km2の総合的な都市であり、200億ドルの投資が期待されている。計画が完了した段階では、人口60万を擁し、36万人の雇用機会を提供することが見込まれる。
    蘇州工業都市は、経済技術開発特別区の資格を受けており、通常の法人税率33%に対して、優遇措置として税率15%が適用される。また、2000年末まで地方所得税が免除されるほか、輸出用製品に対する輸出税も免除される。電力、水道、ガス、下水道、廃棄物処理サービスなどの整備にも積極的に取り組んでおり、医療施設、教育機関も充実している。

  5. 都市づくりに関するノウハウの移転
    ─チュア・テック・ヒムEDB国際事業開発局長発言要旨
  6. シンガポール経済開発庁(EDB)内に設置された蘇州プロジェクト事務局は、蘇州工業都市プロジェクトに関する関係省庁間の調整を行っている。中国側では、蘇州工業団地管理委員会(SIPAC)が工業都市の管理に当たっている。シンガポールが有する都市運営に関するノウハウは、新都市建設というハードウェアを補完するものである。このソフトウェアを蘇州に移転することが重要であり、市場経済を通じて国際競争力を高め、持続的な成長による生活水準の向上を目標にしている。シンガポールの経験は、中国の改革開放を進めるうえでも役立つものと思う。
    中国へのソフトウェアの移転のために、蘇州との間で公務員の人材交流を進めている。シンガポールの政府機関が、蘇州から公務員を受け入れ、土地利用計画と開発管理、建築管理、環境規制、工場立地、公益事業管理などの実務的な研修を行っている。この人材交流が始まってから既に一年半が経過するが、SIPACから約80名の研修生を受け入れている。


日本語のホームページへ