インドシナ開発支援に関する懇談会/9月29日

新たなフロンティアとしてのインドシナ地域


インドシナ地域(ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー)の経済発展には、日本やASEAN諸国をはじめ、各国の注目が集まっている。そうした中で通産省では、昨年9月の日本・ASEAN経済閣僚会議(AEM-MITI会合)での合意を受けて「インドシナ・ミャンマー産業協力ワーキング・グループ」設置のイニシアチブを取り、インドシナ地域の経済開発促進のための具体策について検討を重ねてきた。同ワーキング・グループは、本年8月に中間報告を取りまとめ、9月のAEM-MITI会合に提出した。
そこで経団連では、通産省の桑原南東アジア大洋州課長を招き、中間報告の内容や今後の検討スケジュール等について懇談した(進行 荒木インドシナ研究会座長)。
以下は桑原課長の説明概要である。

  1. 中間報告取りまとめに至る経緯
  2. インドシナ開発については、これまで当事国とその周辺国、またドナー国との間で認識およびアプローチに差があった。ドナー国はどうやってこの地域の所得水準を引き上げるかという観点から、周辺国はどうやって自国製品の販路を拡大するかという観点からのアプローチを取り、また当事国はいかにして外貨を稼ぐかを重視していた。他方われわれは、アジアの経済発展のダイナミズムの中にインドシナを取り込もうとの考えを持っていた。ベトナムに続いて、近い将来ラオス、カンボジア、ミャンマーがASEANに加盟すれば、アジアは日本、中国、ASEANという3極構造の様相を呈する。そこで、世界の成長センターの一極を維持するとの観点から、ASEANとインドシナのマーケットを結合し、東南アジア(SEA)10カ国のマーケットの統合を進めたいというのがわれわれの基本的な問題意識である。
    こうした中、今年の初め頃からASEANの認識がわれわれのそれに近づいてきた。その背景には、「SEA10」を目指す動きの加速化と、経済発展の遅れたベトナムのASEAN加盟が予想以上に大きな困難を関係国に引き起こしたことがある。そこでASEANは、今後加盟が予定される3カ国については、加盟前に必要な諸準備を整えてもらおうと考えるようになり、「SEA10」のマーケットの統合を積極的に進めようとする考え方に変わってきたのである。

  3. ワーキング・グループおよび中間報告の内容
  4. ワーキング・グループは、本年3月、6月および8月の3回にわたり、日タイ両国が主導する形で開催された。検討の結果、下記の7プロジェクトについて協力を行うこととなった。今後、プロジェクト毎に委員会が設置され、リード・カントリー(議事進行の庶務と会議のコーディネーター役を務める)方式で具体的な検討が進められる予定である。日本がリード・カントリーを務めるのは、下記(2)、(3)、(5)、(6)、(7)である。民間からも、委員として専門家会合に参加してもらうなどして、意見・コメント等を得たいと考えている。

    (1) 市場経済化の推進

    ここでは、(1)市場経済化推進のためのシステムやスキーム作りと、(2)そこで動く経済主体の育成、の2点に主眼を置く。
    (1)については、まず学者の間で検討し、経済界の意見も入れて、最終的な統一基準を作る予定である。また(2)については、国営企業の民営化・近代化を支援するため、個別企業について問題点の診断と提言を行うこととしている。

    (2) 市場経済化推進都市構想

    (1)の実現にはかなりの時間を要することから、ここでは地域を限定して市場経済化を進めることにしている。従来の経済特区や自由貿易地域のように、輸出義務があって国内市場から乖離した地域ではなく、国内販売も認めて国内での競争を喚起するような地域としたい。1カ国あたり1〜2都市が望ましく、これから候補地を選定する。

    (3) インフラの整備

    これは、インフラ整備にもBOT(Build, operate and transfer) やBOO(Build, own and operate)方式による民間資金の導入が必要との考え方から生まれてきた。BOTやBOO方式は、民間の金融機関が編み出した変則的スキームであり、リスク分担に関するガイドラインができていないのが実情である。そのため、リスクの分担が曖昧だったり、個別に決めねばならなかったりしている。そこで、世界銀行やアジア開発銀行、日本輸出入銀行、海外経済協力基金等から専門家に参加してもらい、リスク分担に関する基準を策定することにした。また、ここではODAとBOT、BOOとの連携のあり方も検討したい。

    (4) 貿易投資政策のレビュー

    SEA10の経済統合のために、各国が貿易投資政策をどう変えれば良いかをレビューする。

    (5) セクター別の市場リンケージの強化

    通産省が最も力を入れて取り組んでいるプロジェクトである。90年代に入り、ASEAN域内の市場をターゲットに投資・製造を行うようになってから、市場リンケージを強化し、生産基地をリシャッフルすることによって、スケール・メリットを追求する必要が出てきた。そこで、日本がリード・カントリーを務める自動車・家電については、制度・手続き等の簡素化、関税率、比較優位に基づいた産業分散のメリット、サポーティング・インダストリーへの協力等について議論する予定である。

    (6) 鉱物資源開発協力

    日本が持つ衛星探査による鉱物資源開発システムを、インドシナにも拡大しようとするものである。

    (7) 人材育成

    ここでは、(1)カンボジアにおける研修センター設立への支援、(2)第3国研修の活用を中心に、協力を行うことにしている。第3国研修については、シンガポールとタイで行うことにしている。


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