「APEC Business Congress:APB-Net II」参加者打合せ会/10月4日

APEC大阪会議に向け民間の議論白熱


経団連では、10月22〜23日、大阪において、日本商工会議所、大阪商工会議所、関経連との共催、東京と関西の主要経済団体の協賛により、「APEC Business Congress:APB-Net II」(以下ABC)を開催する予定である。そこで、APECの民間諮問機関であるPBF(太平洋ビジネス・フォーラム)の日本代表の室伏伊藤忠商事社長と立石オムロン副会長より、村山首相に提出したPBF報告の概要とPBFにおける議論の模様に関する説明を聞くとともに、豊田経団連会長、大西大阪商工会議所会頭、根本日経連会長、江尻日本貿易会会長ほかABCへの国内の参加者との間でAPECに対する日本の民間経済界の対応について意見交換を行なった。

  1. 室伏 伊藤忠商事社長発言要旨
    1. PBFは1993年11月の米国・シアトルにおけるAPEC第1回非公式首脳会議での合意に基づき、1994年春に設立された。その目的は経済界としてビジネスの立場からAPEC首脳に対し、域内の貿易投資促進に向けた政策課題を提言するということである。メンバーは各国・地域の首脳によって指名された2名の代表によって構成されている。

    2. 本年のPBFの作業は、APECが設立されてすでに6年が経ち、より具体的な行動をとるべき時期に来たとの観点から、中・長期ではなく短期的に目に見える効果が出るような提言に絞るという方針に基づいている。会議は5月にシンガポール、7月に東京、9月に米・カリフォルニア州の計3回行われ、9月22日には報告書を今年の議長である村山首相に提出した。また、本年は高級事務レベル会合(SOM)との連携も密接にしており、SOM議長の外務省の瀬木大使、通産省の今野部長から意見を聞くだけでなく、9月12日の香港の特別SOMにおいてPBFレポートについて説明を行なった。

    3. 今年のPBFレポートの特徴は以下の3点である。
      1. 報告書の全体を貫く考え方として、推進原則、行動スケジュール、進捗状況のレビューという3つの原則を掲げた。この中には、ボゴール宣言で設定された2010・2020年という貿易・投資の自由化達成期限に向けたロードマップの設定や、その際の原則としての多様性の尊重(フレクシブル・コンセンサス)などを盛り込んでいる。
      2. 大阪会議で採択してもらいたい当面の具体策を貿易・投資の自由化、ビジネスの円滑化、開発協力の3分野に分け、10項目の優先項目にして提言した。
      3. APECへの民間の参加に言及し、PBFの後継機関として常設の民間諮問機関の設立を提言した。

    4. PBFのメンバーにはAPECの成長のダイナミズムは民間人が活力となって支えているのだという自信があふれており、参加者からかなり前向きで積極的な提言が多くなされたという印象を持った。また、日本は議長国としてリーダーシップを発揮し、是非とも大阪会議を成功させてほしいという強い要望も感じた。今後とも日米が一致協力してこのAPECを支えていくことこそが、アジアの人々の共通した期待である。

  2. 立石 オムロン副会長発言要旨
    1. 会議を通して感じたのは、日本が議長国として今年の大阪会議を成功させてほしい、という各メンバーの強い期待感である。また、このように多様な国・地域が集まって議論する中で、先進国が自らの目標を発展途上国にごり押しするという図式があるのではないかという質問をよく受けるが、PBFの会議に関する限りそのような印象は全くなかった。むしろアジア、特にアセアン諸国などは前向きな姿勢を見せており、インドネシアやタイなどは自主的に思い切った自由化を進めている。アセアン諸国のAPECへ参加する最大の動機は、いち早く自国を世界経済のメカニズムの中に入れ、経済発展を促したいという強い思いである。その意味からもいわゆる「アングロサクソンとアジア」の対立はなかった。これだけの多様なメンバーの代表と、ビジネスという共通の言葉で議論できたことはとても素晴らしいことだと思っている。

    2. 私のほうからは製造業の立場として中小企業、特にサポーティング・インダストリーの育成について提案した。サポーティング・インダストリーの育成はAPEC地域の投資を増やす最大の鍵であり、海外進出の際にわれわれがいつも感じるのは、下請け産業の育成ができていなければ、現地調達率はいつまでたっても上げられないということである。今度の提言書では、サポーティング・インダストリーを積極的に育成するための手立てを盛り込んでいる。

    3. いよいよ11月は閣僚会議・非公式首脳会議が大阪で開かれるが、日本が抱えている農業などの問題が、ウルグアイ・ラウンドの前倒しの中でどのように扱われるかが大きな焦点となろう。議長国としての立場の重要性を鑑みつつ、日本政府の対応に注目したい。

  3. ABCの開催経緯・趣旨に関する説明
    ―三好経団連事務総長
    1. 94年8月、豪州とインドネシアの商工会議所の呼びかけにより、「APB-Net」の設立総会がジャカルタで開催された。ABCは、この会議での合意を受けて開催する「APB-Net」の第2回目の会議である。
      「APB-Net」は、APEC地域の経済界の連携を強化し、域内経済界のネットワークを構築するとともに、APECの議論に民間の声を反映させていくことを目的としている。

    2. 「APB-Net」は新たな経済団体や独自の事務局を創設するものではなく、既存の経済団体が、経験と知恵を出し合って、いかにアジア太平洋地域のビジネス間の結びつきを強化し、域内経済の活性化を図るかについて話しあう場である。

    3. ABCの案内先は、APECメンバー国・地域の主要経済団体の首脳である。また、PBFの国内外の代表も参加する予定であり、APEC地域の経済界全体でPBF報告の実現に向けて、PBFの活動を支援する重要な場になるだろう。


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