経団連訪韓代表団報告/10月5日〜7日

今後の日韓経済協力のあり方について金泳三大統領や全経聨首脳等と懇談


経団連では、韓国の全経聨(全国経済人聨合会)との間で、1983年より相互訪問を行い、日韓経済界の相互理解の促進を図っている。今回は豊田会長を団長に鈴木副会長、米倉副会長、樋口副会長など12名の代表団がソウルを訪問し、全経聨首脳と懇談したほか、金泳三大統領、金潤煥民自党代表委員、朴在潤通商産業部長官を表敬訪問し、日韓経済問題や今後の協力方法につき意見交換をした。

  1. 首脳懇談会
    1. 崔鍾賢全経聨会長挨拶
      1. 現在、WTO体制の発足、グローバリゼーションの進展に伴い国際競争が激化する一方、リージョナリズムが台頭している。この状況下で日韓経済界は、相互信頼に基づく未来指向的な協力関係を構築する必要がある。
      2. 特に貿易、投資、技術移転など経済全般にわたる協力関係をさらに発展させるべきであるが、部品・資本財産業における両国企業の戦略的な提携事例が増加していることは望ましい傾向である。
      3. また今後、韓国のOECD加盟を契機として日韓両国が、アジアで中心的役割を果たすことも期待される。

    2. 豊田会長挨拶
      1. 本年は戦後50年、日韓国交正常化30年という節目の年である。われわれ経済人は両国の友好親善のため、さらに努力すべきである。
      2. 韓国は現在、来年のOECD加盟に向けて準備中であるが、特に全経聨が中心となって進めている国家競争力強化と、投資環境整備のための諸政策に注目している。また、韓国では行政改革も大きな成果を挙げており、経済界が果してきた役割が大きい。
      3. 経団連では、21世紀の経済社会のあり方を展望する作業を推進中である。基本的な方向として、両国経済界はアジア太平洋地域の活力を最大限に引き出し、同地域の発展をリードすべく協力する必要がある。

    3. 国際経済環境の変化と日韓関係の展望
      金宇中全経聨副会長(大宇グループ会長)発言
      1. 現在、経済の中心が大西洋から太平洋に移りつつある。一方、欧米諸国は自由貿易の必要性を強調しながら、EU、NAFTAなどを結成して閉鎖性を強めるという矛盾した行動をとっている。
        北東アジア諸国は、各国政府と経済界の努力で飛躍的な成長を遂げた。これは優秀な労働力に加えて、相互補完力の強い各国の産業構造によるものである。実際、地域内での水平分業化が進んでいる。

      2. 日本が短期間に復興できたのは、日本人が勤勉であり、また、適切な指導者に恵まれたことによるものだが、隣国の存在も忘れてはならない。例えば、朝鮮戦争による特需や戦争後の国際政治環境が日本に有利に作用したほか、輸出先としての米国市場の存在も大きかった。
        日本はこうした過去の事実を認識して、アジア諸国の喫緊の課題である人材育成について大きな役割を果たしてほしい。

      3. この首脳会議は、これまで日韓両国の懸案事項を話しあう場であったが、グローバリゼーションの進展に併せて、今後はアジアの大同団結を念頭に共存共栄の道を探る必要がある。
        その具体的な検討の場として、日韓経済界に中国経済界を加えて、アジア企業協議体を設けてはどうか。

    4. 懇談要旨
      1. 日韓両国の基本的な協力のあり方
        第三国での日韓協力については、経団連―全経聨経済・経営懇談会(座長:楠川富士総研会長、姜晋求三星電子会長)での検討を踏まえ、今後の対応を議論した。その結果、実際に日韓の協力関係はかなり進んでおり、今後は中国などにおける重化学工業分野でのBOO、BOT方式による協力が有望であり、両国経済界としては、個別企業レベルでの協力をバックアップしていくため、必要な環境整備に努めることとなった。
        これに関連して韓国側から提案されたアジア企業協議体については、中国では民間企業がまだ成長していないため時期尚早であり、今後、経団連―全経聨経済・経営懇談会で検討することとなった。

      2. 貿易不均衡是正について
        韓国側より、貿易不均衡は拡大傾向にあり、両国関係の発展を阻害しているとの指摘があった。さらに韓国側より、政府規制を含む非関税障壁を取り除くため、全経聨と経団連がそれぞれ自国政府に規制緩和を強く求めるとともに、対米関係について共同で議論する協議機関を設置してはどうかとの提案がなされた。
        これに対して、規制緩和については経団連でも現在、その断行を政府に要求しており、特に非関税障壁については、経団連でも窓口を設置し、また政府のオンブズマン制度等もあるので、具体的問題点について指摘してほしい旨を説明した。

      3. その他の論点
        日韓が協力して東洋思想の良い点を世界にも広げつつ対米通商問題に取り組むことで意見が一致した。また、北朝鮮の問題については、北朝鮮を安定的に開放体制に向かわせるように、日韓両経済界が引き続き協力していくこととなった。

  2. 金泳三大統領発言要旨
    1. アジア太平洋時代の日韓両国の役割は大きく、日韓関係を発展させなければならない。他国首脳と会っても、必ず日本との関係について聞かれる。経団連など民間との話合いが、日韓関係の発展にとって重要である。
    2. 日韓の貿易不均衡は、今年も拡大する見込みで、両国関係の他の分野にまでマイナスの影響を及ぼしている。時間はかかると思うが、経団連は全経聨と協力して積極的に解決策を模索してもらいたい。


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