資源・エネルギー対策委員会(委員長 古川昌彦氏)/10月5日

新型転換炉は改良型沸騰水型軽水炉で代替
ITERの建設参加に国民的な議論を


資源・エネルギー対策委員会では、科学技術庁原子力局の興直孝審議官を招き、新型転換炉(以下、ATR)実証炉の建設中止や国際熱核融合実験炉(以下、ITER)計画の現状等について説明を聞くとともに、懇談した。席上、興審議官は「ITERの日本誘致推進という経団連の決定により大きな力を得た。確実に立ち上げていくため、四極(米国、EU、ロシア及び日本)間の横の連絡のための組織づくりをお願いしたい」旨、発言した。

  1. ATR実証炉建設計画の見直しについて
    1. ATR実証炉計画の評価
    2. 去る7月11日、電気事業連合会(以下、電事連)から、原子力委員会、科学技術庁、通産省等に対して、ATR実証炉の建設計画の見直しとそれに代わる改良型沸騰水型軽水炉(以下、ABWR)の建設についての要望があった。電事連からの申し入れを受け、原子力委員会は、ATR実証炉計画について、経済性と核燃料リサイクル上の役割について検討した。その結果、経済性については、建設費が当初見積もりの 3,960億円から 5,800億円に、発電原価は軽水炉の約3倍に増加することが判明した。また、軽水炉によるMOX(混合酸化物)燃料利用計画の進捗、高速増殖炉(FBR)の順調な開発等により、プルトニウム燃料を利用する炉としてのATRの役割等は薄れつつあることから、ATR実証炉の建設計画については中止が妥当との結論に達した。

                    ATR実証炉の建設費及び発電原価
      ┌──────────┬───────┬───────┐
      │                    │  現行建設費  │  今回見直し  │
      │                    │(1984年度価格)│(1993年度価格)│
      ├──────────┼───────┼───────┤
      │建  設  費      │     3,960億円│     5,800億円│
      │建 設 単 価      │   65.3万円/kw│   95.7万円/kw│
      │発 電 原 価      │              │              │
      │− 30%補助、負担あり│   15.10円/kwh│   22.18円/kwh│
      │− 補助、負担なし   │   25.90円/kwh│   37.58円/kwh│
      └──────────┴───────┴───────┘
      (注)初装荷燃料の成型加工費を無償とした値である。
      

    3. ATR実証炉の代替計画
    4. 技術的見通し、実用炉としての経済性、そしてプルトニウムの需給バランスの3点に留意した。技術的及び経済的見通しについては、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機をベースに改良を加えることにより、また、需給バランスについても、全炉心にMOX燃料を装荷することにより、電事連から提案のあったフルMOX−ABWRは代替計画として適切であるとの結論に至った。

    5. ATR関連の研究開発への取り組み
    6. 実証炉計画の中止が決定したことにより、具体的な実用化を念頭に置いた開発を継続することは不適当となり、その結果、原型炉「ふげん」はプルトニウム利用技術開発施設、国際的共同研究施設等として利用することになった。具体的内容については、関係機関で協議し、11〜12月頃、原子力委員会において結論を得ることとしている。

    7. その他留意事項
    8. 原子力利用長期計画に明記されている計画を中止するという決定の重大さから、特に「核燃料リサイクルの基本堅持」「大型技術開発の実用化に当たっては、研究開発主体と建設・運転主体との密接な連携等が重要」という留意事項を示すこととした。

  2. ITER計画の現状について
  3. ITER計画では、概念設計活動を経て、現在、四極(米国、EU、ロシア及び日本)により工学設計活動が行われている。
    わが国の核融合政策上、現行の原子力利用長期計画には、ITER工学設計活動に主体的に参加することが明記されている。今後、ITERの建設参加には原子力委員会の決定を経なければならないが、総額一兆円を超す事業と言われているだけに、国民的な議論が必要になると考えている。
    去る7月の第8回ITER理事会には中間設計のドラフトが提出され、12月にドイツで予定されている次回理事会において確定を目指すべく、現在、各極毎にその内容について検討中である。今後、特別作業グループを設け、建設サイトの選定方法、建設運転主体の在り方等について検討を進める予定となっており、1998年、工学設計活動終了後、建設活動に入ることになる。
    今回、ITERの重要性を各極にアピールする意味もあり、現時点における評価に関し審議を行い、その意義を再確認した。現在、厳しい財政状況にある米国に対しては、特にITER理事会議長、共同議長名でゴア副大統領に書簡を送り、米国政府より参加継続の確約を得ている。
    サイトに関しては、各極に幾つかの候補地がある。わが国では、苫小牧東部、茨城県那珂町、青森県六ケ所村において誘致の動きがある。EUもまた、強い関心を示しており、極内での絞り込みは行われていないものの、フランス、旧東ドイツ、スウェーデンなどの地点を候補として挙げている模様である。


日本語のホームページへ