経団連活動報告/9月20日

オーストラリア・ブリスベン市の王立子供病院に“経団連ハウス”“経団連オーディトリアム”が開設される


「王立子供病院の新病棟建設に際し、日本経済界の心暖まるご支援に応えるため、子供の肝臓移植手術に同伴される親たちの宿舎を“経団連ハウス”、患者や病院関係者が研修などを行う講堂を“経団連オーディトリアム”と命名し、日豪両国の友好親善に寄与したい」(『経団連くりっぷ』No1、1月12日号参照)。去る9月20日、オーストラリア・ブリスベン市の同病院において、この施設の開所式の際、クイーンズランド州ピーター・ビューティ保健大臣が日本経済界や一般市民による資金的支援に感謝を込めて挨拶された。
日本側募金委員の一人で実際の募金活動の労を執った日豪文化交流協会の松山芳夫会長は、開所式に出席し感激してこの挨拶を聞いた。以下にこれまでの経緯を紹介する。

  1. 王立子供病院とは
  2. 1878年に創立されたブリスベン市の王立子供病院は、子供の臓器移植の専門病院として海外にも広く門戸を開いており、生まれつき胆道が詰まっている胆道閉鎖症の子供たちや親が明日を託している。
    この病院の建物は築後100年以上を経て医療施設の老朽化が著しく、さまざまな問題を抱えていた。エアコンもセントラル・ヒーティングもない病室。手術や治療のため患者を移動させる際、一度外に出なければならない古い設計。付添いの家族のための部屋もなく、高度な医療機器も廊下や待合室に保管するしかないという状況を改善するため新病棟を建設することとなった。

  3. 日本との深い関わり
  4. 同病院と日本との関わりは、1989年に当時1歳だった日本人の子供が、日本では脳死による臓器移植が認められていないため、同病院で世界初の母子生体部分肝移植を受け、成功したことに始まる。この時に渡豪した日本人医師団は手術と生体肝移植の成否をわける前後のケアに関する貴重なノウハウを取得することができたという。
    これまでに日本の子供たち80余人が、手術・治療を受け、うち73人が肝臓移植を受けた。さらに手術を待っている子供たちが何人もおり、現在でも多くの日本人医師がこの病院で研修を受けている。

  5. 募金活動の経緯
  6. 新病棟の建設費は 3,248万豪ドル、うち州政府が2,187万豪ドルを拠出し、残る 1,061万豪ドルは王立子供病院財団が募金することとなった。しかし同国内でこの不足額全額を調達することは不可能とのことで、約3分の1の300万豪ドルを日本からの資金協力により賄うこととなった。
    日本国内での募金活動は2段階に分けられ、第1段階では新病棟の第1期建設工事に並行して広く一般の方々に協力を呼びかけた。患者の親たちがボランティアで事務局を勤め、日本テレビが製作したドキュメンタリー番組をもとに協力を依頼、約1億円もの浄財が寄せられた。(うち、大手ゲーム機器メーカーが5,000万円を拠出)
    第2期建設工事に合わせた第2段階の募金活動においては、経団連に支援要請があり、当会では新体制による強力な募金委員会の設置と、オーストラリアと関係の深い団体・企業などの財界人の募金委員への就任を助言した。これを受け「日豪文化交流協会」に新事務局を引き受けてもらうことになった。新たな募金委員には斎藤英四郎日豪経済委員会会長(経団連名誉会長/新日本製鐵名誉会長)ほか強力なメンバーが就任された。
    今回の募金方法は主要な業界団体・企業に広く薄く寄付を求める、いわゆる経団連方式により推進され、募金委員・事務局の2年間にわたる奔走の結果、深刻な不況下にもかかわらず、目標額300万豪ドルを大きく上回る約400万豪ドルの浄財が企業・一般市民から寄せられた。
    これに対し病院側が感謝のしるしとして標記の施設に経団連名を冠することとなった。
    ご協力いただいた関係各位に厚くお礼申しあげたい。

完成した王立子供病院新病棟
完成した王立子供病院新病棟


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