なびげーたー

経団連訪欧ミッションへの期待

国際経済部長 市川 博也


新しい政治の流れが安定しないのは日本だけではない。
ヨーロッパとのパートナーシップをどう築くか。

11月はAPEC大阪会議で話題が尽きない。21世紀に向けた国際政治経済体制をめぐる議論が幾つもの潮流の渦巻き状況の中で、大きく揺れ動いている。このAPEC大阪会議直後に、豊田経団連会長並びに副会長からなる訪欧ミッションが11月23日より12月1日まで派遣される。欧州委員会のあるベルギーをかわきりにその後、訪独グループと訪オランダ・デンマークグループにわかれ、英国ロンドンで合流する形の日程が固まりつつある。

今回の訪欧ミッションの特徴は、

  1. 小人数で訪問国の政治経済界の指導者と、インフォーマルに密度の高い対話を行うこと、
  2. 日本経済の展望、規制緩和の進展、アジア太平洋時代への展望等、訪問国各地でセミナーを開催し、積極的な日本からの情報発信をしていくこと、
  3. 日欧関係強化のための積極的な提案を行なっていくこと、
等である。すでにサンテール欧州委員長、コール独首相、メージャー英首相、デハーネ・ベルギー首相との会談日程も決定。日本を重要なパートナーとして巻き込もうとする欧州各国の経団連ミッションへの期待は高い。

1995年1月、ルクセンブルグ首相だったサンテールが欧州委員長に就任。調整型の政治家として、その誠実な人柄が知られている。東西冷戦の終結は、西欧諸国の政治に大きな変化をもたらした。左翼政党は社会主義的な政策を薄め、保守と左派の違いも小さくなった。多様化する人々のニーズに対応して、環境政党や地域政党、そして場所によっては極右政党などさまざまな政治勢力が台頭した。古い体制は崩壊しても、新しい政治の流れはなかなか安定せず、幾つもの潮流が渦巻いている。それは「EU統合」をめぐる政治の動きについても同様である。「欧州連邦主義者」として知られるコール首相と国民レベルの意識のギャップが指摘されている。英国ではメージャー首相のEU政策は揺れ動いた。当初、マーストリヒト首脳会談で、通貨統合や共通社会政策に参加しない権利を主張。独仏主導のEU統合路線に距離を置き、「欧州連邦案」に対し、主権国家の連合にとどめたいという立場を基本としている。ベルギーのデハーネ首相は、95年4月「独仏とベネルックス3国で99年1月から通貨統合をスタートさせることが可能」と発言。EU加盟国でどんな新たな社会潮流が生まれ、どんな政治家が生まれてくるのか? 統合は大きく揺れながら進んでいる。


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