APEC高級事務レベル会合に関する説明会(座長 末松副会長)/10月18日

APEC行動指針案の大枠固まる


APEC大阪会議を間近に控え、政府の準備は大詰めの段階に入っている。特に、APEC域内における貿易・投資の自由化を具体化する行動指針(アクション・アジェンダ)案は、議長国日本の力量を示すものとして、APECメンバーのみならず世界がその内容に注目している。そこで経団連では、東京で開催された高級事務レベル会合(SOM)および同特別会合(10月9日〜13日)の議長を務めた通産省の今野経済協力部長を招き、取りまとめの最終段階に入った行動指針案の内容について聞いた。以下は、今野部長の説明要旨である。

APECの活動の3本柱は、(1)貿易・投資の自由化、(2)貿易・投資の円滑化、(3)経済・技術協力である。行動指針もこの3つを骨格としており、その輪郭もほぼできあがった。アジアの現実に根ざした、ユニークな枠組みができようとしている。行動指針案の取りまとめに際しては、PBF(太平洋ビジネスフォーラム)や経団連から貴重な意見をいただき、感謝している。

APECは、拘束力のある形で自由化を進めるやり方はとらない。自主的な自由化が基本である。大阪会議の後、APECメンバーは各々自らの自由化計画を策定し、これを96年のマニラ会議に持ち寄って、97年1月から自発的に実行に移す。そして、実施状況をお互いにレビューし、自由化の足並みがそろっているかどうか評価し合いながら、必要に応じて計画を改訂していくことになる。この点が、最初から自由化の内容や手順をきっちりと決めてしまうGATTの交渉と異なる。なお、大阪会議には、各メンバーが当初措置として、当面自発的に自由化・円滑化を進めることができる分野を持ち寄ることになっている。

自主的な自由化が果して可能かとの議論があるが、私は可能であると考える。なぜなら、近年、メンバーの間では保護主義によって国内の幼稚産業を保護しようという考え方が時代遅れのものとなっており、インドネシアやマレーシア等、実際にウルグアイ・ラウンド合意を超えて自発的な自由化を実施している国もあるからである。

APECの自由化に例外分野はないというのが、各メンバーの一致した見方である。最近、日本や韓国が農産物を例外扱いするよう主張して、対立が生じていると報じられているが、日本政府としては、微妙な分野があると言っているだけで、包括性を否定する主張はしていない。各メンバーにも同様の分野があるはずであり、さほど解決が難しい問題ではないと考える。

貿易・投資の円滑化に関しては、個別分野毎に具体的な方策が決まりつつある。例えば税関手続きについては、関税分類の国際基準への統一と手続きの電子化、輸入貨物到着以前のコンピュータによる通関処理等の措置が準備されている。


日本語のホームページへ