経済協力委員会(委員長 米倉功氏)/10月19日、20日

世界銀行・経団連年次会合を開催


経済協力委員会では、さる10月19日、20日の両日、ワシントンD.C.において世界銀行・経団連年次会合を開催した。同年次会合には、経団連側から豊田経団連会長、米倉経済協力委員長をはじめ経済協力委員会メンバー企業の幹部14名が参加し、世界銀行側からもウォルフェンソン総裁、フランク専務理事、リシャール副総裁をはじめとする幹部が多数出席した。2日間にわたり、新総裁の下での世界銀行グループ改革の方向、同グループに対するわが国経済界の貢献の拡大(人事交流)等をめぐり集中的な議論が行なわれ、その結果を踏まえて世界銀行と経団連の間でアクション・プランを推進することに合意した。
以下は、ウォルフェンソン総裁の開会挨拶と意見交換の概要、およびアクションプランの骨子である。

  1. ウォルフェンソン総裁の挨拶概要
    1. 世界銀行は設立から50年が経ち、官僚的な慣行に縛られている。この官僚機構を打破し、職員の訓練、報酬制度、仕事の目標の設定等を改善していく必要がある。

    2. 世界銀行が素晴らしい経験と業績を持つ優秀なスタッフを抱えていることは誇りである。一方、世界経済は変化し、社会開発の遅れが途上国で大きな問題となっている。世界銀行では経済分野のみならず、環境、女性問題等の分野で共に仕事をしてくれる卓越したパートナーが必要である。

    3. 世界銀行はかつて日本を支援し、今では日本が世界銀行を支援してくれている。世界銀行では大蔵省との関係のみならず、日本の民間経済界との対話を深め、新しいパートナーシップを築いていきたい。

    4. 経団連との人事交流については、良い交流ができるのであれば障害となっている世界銀行側の規則を改定してもよい。また、世界銀行から日本企業に職員を派遣することにより、日本の経験と知識に学びたい。
      プロジェクトにおいても、双方の経験を合わせて検討を進めたい。すでに情報通信やエネルギー等の分野で経団連との新しい協力関係が始まっている。

    私は世界銀行の総裁として以上の発言に 100%の責任を有している。世界銀行にとり日本ほど重要な国はなく、経団連ほど重要な組織はない。世界銀行はこの会議を重視している。

  2. ウォルフェンソン総裁との意見交換
  3. ウォルフェンソン総裁の挨拶を受け、豊田経団連会長からは、世界銀行が日本の経済復興に果たした役割、規制緩和等の経団連の日本経済の再活性化の取組み、日本の民間経済界として途上国の経済開発に知的・人的貢献を推進していく意向等について説明をした。

    また、米倉経済協力委員長からは、世界銀行と経団連の制度的関係の構築に関し、

    1. 人事交流の促進とその障害となる課題の解決、
    2. プロジェクトや特定国の援助方針の形成における連携の強化と世界銀行東京事務所の機能拡大、
    3. 世界銀行の保証業務の拡大
    等の提案を行なった。

    以上の経団連側の発言と提案に対し、ウォルフェンソン総裁からは、人事交流においては経団連と世界銀行の間で原則で合意した上で、人材を適正な場所に配置することに努力するつもりであり、総裁として責任を持って対応したいとの発言があった。また、日本の企業が日本の経済発展に果たした役割に注目し、情報通信、エネルギー等の分野で両者が組織的に意見交換をすることが重要であるとの指摘が総裁からあった。さらに、世界銀行が民間セクターとの協力を推進するために機構改革を行い、民間セクターの開発に深く関与していく決意の表明が総裁からあった。

  4. アクション・プラン
  5. 同年次会合では、ウォルフェンソン総裁との活発な意見交換を皮切りに、2日間にわたり、世界銀行の民間部門開発促進アプローチ、世界経済の展望、東アジアの経済発展の経験の他地域への移転、ロシア・中近東等の地域開発問題、エネルギー、地球環境問題、情報通信等のセクター別テーマ、民間部門のプロジェクト・ファイナンス、世界銀行の投資保証メカニズム等を中心に、世界銀行の幹部と集中的な意見交換が行われた。

    以上の討論の結果を踏まえ、経団連と世界銀行は以下のアクション・プランを今後1年間にわたり協力して推進することで合意をした。


経団連―世界銀行グループ・アクション・プラン

1.人事交流
経団連と世界銀行グループの間で制度的な人事交流(出向ベース)を行い、両者の有する知識・経験の組織的交流を開始する。

2.政策対話の実施
相互に関心のあるセクター、地域問題について集中的な政策対話を行う場として、ワークショップ等を開催する。
  1. セクター別テーマ
    • 開発のための情報通信の活用
    • エネルギー
    • 地球環境
  2. 地域別テーマ
    • ロシアおよび他の体制移行国
    • 中近東および北アフリカ
3.情報交換
経団連および世界銀行グループは開発問題に関する経験と知見を共有するために以下の分野を中心に情報交換を推進する。
  1. 保証業務(世界銀行、MIGA)
  2. 開発途上国における日本企業の経験および世界銀行グループの役割

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