日本銀行幹部との懇談会(司会 樋口廣太郎財政金融委員長)/10月25日

経済構造改革、金融への不安感払拭が、経済活性化の鍵


財政金融委員会では、松下総裁はじめ日本銀行幹部を招いて常任委員会を開催し、内外の景況をめぐり意見交換を行なった。松下総裁からは「マクロ政策は限界に近く、今後は、経済構造改革に向けた規制緩和を進める一方、金融への不安感払拭のため、不良債権処理方策を早急に打ち出す必要がある」との説明があった。

  1. 松下総裁挨拶要旨
    1. 日本経済はここ数カ月足踏み状態が続いているが、財政金融面での思い切った対策が講じられたことなどから、この先、さらに落ち込む可能性は小さい。また公定歩合の史上最低水準への引下げの結果、株価は7月以降2割程度上昇、為替相場でも秩序ある反転が進んだ。政策効果の発揮には時間が必要だが、この動きが持続すれば、相当程度、景気を支えることが期待される。日銀は、経済が回復基調に向かうかどうか、注意深く見守っていく。

    2. マクロ政策が限界に近い現在、新産業・新事業の創出や、生産性向上を促す構造改革が期待されており、規制緩和が重要な鍵を握っている。

    3. 先般の「プラザ合意10周年記念シンポジウム」では、日本の金融システム問題について講演し、
      1. わが国金融の現状は深刻だが、金融システムの中枢は揺らいでいない、
      2. 不良債権処理にあたっては、金融機関のリストラを前提に、金融システムの構成メンバーが負担を分かち合う必要があり、それでも負担しきれない損失が発生した場合には、広く国民に負担をお願いせざるをえない、
      3. 金融システム安定のため、住専処理・預金保険のファンド強化・財政資金導入の問題を同時に解決しなければならない、
      の3点を強調した。できる限り早期に、国民と内外市場が納得する答えを見出さなければならない。

  2. 国内の景況について
    ―本間理事・大阪支店長説明要旨
    1. 今回の支店長会議における各地の報告は「景気は引き続き足踏み状態」という点で一致したが、先行きに関する一時の悲観的見方は薄らいでいる。

    2. 公共投資については、政府の経済対策、また阪神地区の復興需要もあって、需要増が見込まれる。住宅投資も、関西地区での復興に向けた建設ラッシュ等によって、前年を上回る伸びとなっている。
      一方、個人消費では、地域・業種によるバラつきが目立つ。設備投資も、好調な部門は限られている。

    3. 結局、自律的回復への具体的展望はまだみえず、回復に向かうにしても、力強さはあまり期待できない。経済活性化の鍵は、産業構造転換と金融システム問題の解決が握っている。

  3. 海外の景況について
    ―原田ニューヨーク駐在参事、松島ロンドン駐在参事、村上香港駐在参事説明要旨
    1. 米国経済は、在庫調整の最終局面に入っており、年明け以降、緩やかな回復に向かうとの見方が強い。来年前半には潜在成長率に見合う2.5%程度になると考えられる。

    2. 欧州における景気後退懸念は、ドル安の是正、米国景気の軌道回復によって薄れており、欧州全体の今年の成長率は2%台半ばには達するとみられている。

    3. 中国では、1〜9月期の実質GDPが前年比9.8%、インフレ率は16.6%と、目標に近い水準で推移している。台湾・香港の経済は減速気味、韓国は輸出拡大と設備投資増大により9%の高成長を持続する一方、労働市場の逼迫が目立ち、物価への悪影響が心配されている。他のASEAN諸国経済はいずれも好調に推移している。

  4. 懇 談
  5. 経団連側の「当局ならびに金融機関は、もっと積極的に情報発信を行なうなど、金融システムに対する預金者の不安払拭に取組んでほしい」との発言に対して、日銀側からは「金融機関は情報開示に前向きになってきている」「預金は、当面どんな事態が起こっても、保護する方針である」との回答があった。


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