なびげーたー

宇宙産業の自立のために

開発部長 池 誠


わが国の宇宙開発は今後一層技術力に磨きをかける一方、コスト削減に努め国際的に競争できる力をもつ必要があり、政府の強力な支援が望まれる。

わが国の宇宙開発は分野によっては技術的に欧米と肩を並べる段階に達している。昨年のきく6号の不具合にしても、当初意図した静止軌道上での実験こそ不可能となったが、かわりに楕円軌道に乗せることに成功し、数々の実験を行うことができた。
この即座の的確な対応技術は、先般大好評を博した映画「アポロ13」で明らかとなった米国の技術ほど緊迫性の高いケースではなかったにしても、きわめて高度なものであり、図らずも、わが国の技術レベルの高さを実証する結果となった。

このように技術的には世界レベルに到達しているが、開発、製造コストを比較すると、円高とか歴史的・技術的蓄積の少なさもあって、国際水準の2倍程度上となっている。ロケットや衛星を製造している民間企業にしても国際競争に耐えるほどには育っていない。現にNTTやNHKなどが打ち上げた商業衛星はすべて欧米企業が受注している。わが国の宇宙開発の底はそれだけ浅いということである。
気象、観測、測位など、宇宙開発・利用はわれわれの日常生活の上で不可欠の存在となっており、わが国宇宙開発を一層身近なものにするためには、宇宙開発の商業化がぜひとも必要になってくる。
コスト削減には、科学技術庁・宇宙開発事業団でも、本格的に取り組み始めており、現在1基打ち上げに190億円かかるH-II型ロケットを4年後には140億円、6、7年後には国際競争力のある85億円に引き下げることを目指して、民間企業にも協力を求めてきている。

産業界としても宇宙開発のコストダウンを実現するため、宇宙分野の技術開発に一層注力するとともに人材、資金などの投入増に努めているが、宇宙開発は欧米諸国においても国家的事業として政府資金が大量に投入されてきた。わが国政府としても税制・金融などの優遇措置に加えて以下のような促進策を講ずる必要があろう。
その第1はロケットや衛星の打ち上げ回数の大幅増加と企業が自力では取得できないような大型実験設備(スペースチャンバーなど)の整備、その無償貸与、衛星構成機器等の実証実験の推進である。宇宙の特殊性に対処するため、とくに事前に地上で実験を行うことも大切である。
次に宇宙開発事業団と企業が共同で開発した技術の工業所有権を民間企業がロイヤリティなしで使用できるようにすべきである。また宇宙分野での国際化を一層進めるため宇宙の平和利用原則の解釈を国際的に通用するものに見直す必要がある。さらに産業政策の観点から宇宙開発を政府として一元的に進めることが強く望まれる。


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