日本ブラジル経済委員会(委員長 齋藤 裕氏)/11月1日

レアル・プラン導入後、1年
―社会的な格差の是正に向けて


日本ブラジル経済委員会では、ブラジル連邦共和国のマシェル副大統領を招き、レアル・プラン導入1年後の同国の経済状況を中心に説明を聞いた。同副大統領は、「カルドーゾ政権はレアル・プランを成功に導くためのあらゆる努力を惜しまない。この計画の成功により、国家の安定化、持続的な経済成長、社会的な公正さを実現し、真のグローバル国家の建設を目指す」と強調した。以下はマシェル副大統領の説明の概要である。

マシェル副大統領

  1. レアル・プラン導入前のブラジル経済
  2. 1980年代はブラジル経済が長く停滞した時期であり、この時期のGDPの平均成長率は年間1.7%にとどまり、国民1人たりのGDPは4.3%の減少を記録した。これらの数値は対外的には債務問題を反映し、国内的には財政赤字問題と極めて高いインフレ率を反映していた。1980年代の終わりには政府は社会面においてその基本的な役割を果たしえない状況に陥り、インフラストラクチャーの整備、国家独占分野の維持および拡大に必要な投資を賄えない状態にあった。

  3. レアル・プラン導入後のブラジル経済
  4. インフレ率は現在、月間1%から2%程度に収まっており、今年8月末日までの統計によれば、主要な物価指数の累積値は約15%であり、これは過去25年間の同期間中に記録した最も低い数値である。急速なインフレ率の低下は国民の購買力に顕著な影響を及ぼし、消費を刺激しただけでなく、雇用の増加、実質所得の向上をもたらし、低所得層の最低賃金は54%増加した。また、昨年7月から今年7月にかけて都市部における平均失業率も11.5%減少した。

  5. ブラジル政府の取組み
  6. 政府が今年前半に提案した各種法律の改正案の大部分は既に通過している。例えば外資系と国内資本系のブラジル企業に対する差別が撤廃され、その結果として国内および海外の民間資本が通信、エネルギー、ガス、運輸、石油、鉱業の各分野において追加投資をする道が開かれた。因みに主要な国営企業21社の民営化が来年半ば頃までに完了する予定であり、その中にはバレドリオドセ会社 (CVRD) も含まれている。また、政府は社会福祉制度の改革、労働力コストの削減、インフラストラクチャーの整備事業に対する民間企業の参加、非官僚化、規制緩和、公共機関の効率化等、各種の改善目標を設定し、実現を目指している。これらの目標の実現によってブラジル国内の生産コスト、サービス・コストの削減が可能となる。


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