中南米委員会(共同委員長 宮岡 公夫氏、高垣 佑氏)/11月2日

ベネズエラ政府、経済再建に向け世銀・IMFとの交渉を開始


中南米委員会では、マトス・ベネズエラ大蔵大臣を招き、同国の政治・経済の現状ならびに経済改革計画について説明を聞いた。以下は、マトス大臣の説明概要である。

  1. ベネズエラの現状
  2. わが国は独立以来、ラ米で最も安定した民主主義国家と言われてきた。93年には政治的混乱が生じたが、94年に就任したカルデラ政権により、政治的安定が回復された。同政権の長期ビジョンは、
    1. 民主主義の堅持、
    2. 工業製品輸出による競争力の強化、
    3. 地域統合の推進、
    4. 労使協調体制の構築、
    である。

    ベネズエラは、石油、水力発電、アルミニウム等の豊富な天然資源を有しているが、これまで石油等による外貨収入に大きく依存してきた結果、経済は豊富な資産とは相反した状況にある。インフレが進行し、マイナス成長を記録している上、過去10年間債務国であり、昨年の金融危機後は一時、GDPの15%相当もの債務を抱えていた。

  3. アジェンダ・ベネズエラ
  4. ベネズエラ政府は、石油収入に依存した体質から脱却し経済を建て直すため、経済改革「アジェンダ・ベネズエラ」を策定し、IMF・世銀の支援を受けるべく両機関との交渉を開始した。
    「アジェンダ・ベネズエラ」には、経済・社会分野に関し、
    1. 財政赤字の漸次削減、
    2. 行政改革と民営化、
    3. 為替管理の柔軟化、
    4. 通貨・金融政策の修正、
    5. 生産活動の活性化、
    6. 社会プログラムの拡充
    等が盛り込まれている。

    財政赤字は、95年の見通しは対GDP比9%であるが、96年には4%、97年には2%まで削減する。具体的には、脱税防止のための徴税システムの近代化、公務員ポストの凍結等に取り組む。
    また、行政改革、生産活動の活性化のため本年12月から石油、アルミニウム、鉄鋼、森林等の生産部門を民営化し、外国投資家の参加を求める。

    昨年6月末の金融危機以後、暫定的に行ってきた為替管理については、96年の第1四半期までに通常の取引に関する管理を撤廃する。資本関係の管理については現在IMFと交渉中であり、将来、撤廃される見通しである。さらに、統一のとれた通貨・金融政策を実施するため、中央銀行と大蔵省との政策の調整を行う。また政府が定めていた金利を市場の決定に委ねる。

    これらの経済調整プログラムにより、経済が安定化し、外国企業の資本、能力を取り込むことにより経済が活性化することを期待している。


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