北アフリカ委員会(共同委員長 渡辺 英二氏)/11月6日

日本企業の投資を期待するチュニジア


北アフリカ委員会では、国連工業開発機関(UNIDO)とともにチュニジア共和国投資セミナーを開催し、チュニジア共和国対外投資振興庁のゼクリ投資促進部長および日本輸出入銀行の佐々木海外投融資相談室長より、同国の投資環境を中心に説明を聞いた。
ゼクリ部長は「チュニジアは政治的・社会的・経済的に極めて安定している。また、比較的恵まれた人的資源・インフラを有するなど投資環境はかなり整備されており、日本企業の積極的な投資を期待している」と強調した。以下は両氏の説明の概要である。

  1. ゼクリ投資促進部長説明要旨
    1. 主要な経済改革の内容
    2. (1)貿易・価格の自由化
      IMF・世銀の支援により、1986年から貿易・価格の自由化を中心に構造調整計画を実施している。1994年には工業製品の92%が国際競争に開かれ、諸価格の90%が自由化された。
      (2)財政改革
      1987年に税制改革が実施され、所得税・法人税の最高税率が35%に改定された。
      (3)金融制度の改革
      1991年以来、金融市場も開放され、民間の商業銀行、投資銀行が台頭しており、1994年の貯蓄高はGDPの24.6%にものぼった。また、為替制度に関しても通貨の交換性を高めるとともに、送金手続きの簡素化を図った。

    3. 主要な経済指標の推移
    4. 1962年から1994年のGDPの平均伸び率は 5.2%であり、この成長は主として工業やサービス産業の分野における生産性の向上および輸出の堅調な伸びによるものである。インフレ率は1991年の7%から1994年には 4.7%に低下し、EU諸国の平均 4.1%に近い水準となった。
      財政赤字は対GDP比率が1990年の 4.2%から1994年には 1.9%へ減少した。対外債務は1986年、1991年がそれぞれ経常収入の28%、22%であったが、1994年には18.5%に減少した。さらにチュニジアは債務繰延べを一度も実施しておらず、国際金融機関の信用度も高い。特に日本では過去4回サムライ債を発行した実績がある。しかし失業率は依然14.5%と高く、徐々に改善しつつあるが、これは今後の政府の課題である。

    5. 投資に当たってのチュニジアの構造的メリット
    6. (1)インフラストラクチャー
      2万km以上におよぶ道路網、8つの商業港と6つの国際空港を有するなどチュニジアのインフラストラクチャーは比較的整備されている。特に、2つの自由貿易ゾーンと62の工業団地のインフラはかなり整備されている。
      (2)労働力
      個々の企業の要望に応えられるよう、政府は人材開発に力を入れており、熟練工、ハイレベルの技術者が育ってきている。結果、製品の不良品率も比較的低い。また、週48時間労働制であり、最低賃金が1カ月あたり160 ドルと欧州に比べ安価である。

    7. チュニジアにおける投資インセンティブ
    8. チュニジアの電気・電子部品、自動車部品、電気通信、薬品さらには食品・農業の各分野に対しては、特に日本企業からの投資を期待するが、チュニジアにおける投資インセンティブとしては以下の点が挙げられる。

      (1)共通のインセンティブ
      すべてのプロジェクトに対して供与されているもので、具体的には、国内で生産された資本財を購入した場合には、付加価値税が免除されることや資本財に対する輸入関税が10%に軽減される。
      (2)特殊なインセンティブ
      これは輸出、地方振興、農業開発、環境保護および技術移転等の分野を対象に優先的に供与される。例えば 100%輸出向けの企業には具体的には以下のようなインセンティブが挙げられる。まず部品の輸入が 100%免除となる。次に、最初の輸出取引が開始されて後、10年間は所得税が 100%免除となり、11年目からは50%が免除となる。さらに利益の一部を再投資に向けるならば、その額が課税対象額から控除される。また、簡単な通知により外国籍の管理・監督者を4人まで雇用できる。
      (3)EUとの協定
      チュニジアの貿易取引の73.4%が対EUであり、今年の7月17日にEUとの自由貿易協定を締結した。この種の協定をEUと結ぶのはチュニジアが最初であり、この協定は政治・経済・社会の各分野を包括している。例えばチュニジアに拠点を置く企業がEUへ輸出する場合は、EUの関税は 100%免除され、数量の割当てもない。また、EUからチュニジアへの輸入については、今後12年の間に段階的に自由化されることになる。

  2. 佐々木輸銀海外投融資相談室長説明要旨
    1. チュニジアに投資する際の留意点
      1. 人口が900 万人と少ないため、国内市場向けよりも輸出指向型、特に欧州向けの投資が望ましい。
      2. 労働力の質はアジアに比べると多少見劣りするがアフリカの他の国よりは高い。
      3. 大統領の統治が成功しており、イスラム教国であることによる問題点は他の国に比べて少ない。
      4. 安全保障については、完全にフランスに依存しているため、フランス製品と競合するようなプロジェクトの実施はかなり困難である。

    2. 日本企業にとっての投資の可能性
      1. 日本に輸出して競争力があるものとしては、高級鮪、ワイン等である。この場合、投資あるいは技術援助を行うことにより、これら輸出品目の日本市場での販売が容易になる等のメリットを見出せる。
      2. チュニジア政府が日本企業に求めているのは、技術移転、マーケティング、教育訓練、マネージメント等である。チュニジアではこれらの点を満たす日本からの投資が期待されており、政府より特別のインセンティブが供与される可能性がある。


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