なびげーたー

創造性に溢れた人材の育成に向けて

総務部長 角脇 通正


日本を良い国にしていくための全ての根幹となるのが「教育」である。政治を良くするためにも、行政が時代を先取りしていくためにも、人材の育成が不可欠である。日本の国の将来を考え、この問題に真剣に取り組んでいきたい。

上記は「創造的な人材育成に関する懇談会」(座長 末松謙一氏)の初会合での豊田会長からの問題提起である。

21世紀に向けて、経済・社会システムを変革していく上で、「人」の面では自らの力でフロンティアを切り拓いていける人材、主体性と自己責任に裏打ちされた創造性ある人材が求められる。

そうした人材を育成するためには、どのような教育システムが望ましいか、また経済界、企業は何をなすべきであろうか。

第1は、子供たちが個性と創造性を伸ばせるような教育環境を整えていくことである。子供たちが偏差値偏重、学歴至上主義といった社会的風潮のもとで本来望ましい学習を受けられないという状況を変えていく必要がある。特に初等・中等教育において自ら考える力を養う教育、思考力と体験を重視する教育が望まれる。制度面では学校の週5日制実施や中高一貫教育の公立校整備などが考えられる。

第2は、教育における複線的選択機会と複眼的評価システムの実現である。有名進学校から有名大学、一流企業へという単線的セットメニューを改め、多様な進路や教育機会を選択でき、また進路の変更や再挑戦を可能とするような複線的なシステム、同時に個人の多様性をさまざまな角度から複眼的に評価していくことが望まれる。このためには、カリキュラムの改革を通じた大学の多様化・個性化の推進、評価の多様化を図るための入試改革等が必要であろう。

第3に、時代を担う人材の育成や教育改革について、教育界に要望するだけでなく、企業自ら率先して行動していくことが求められる。企業における組織重視、効率性重視の人事システムが、企業人の創造性を活かしているとは言いがたい面があるし、また、企業の採用活動が大学入試に影響を与え、受験戦争過熱の遠因となっているとの批判もある。多様な個性ある人材を受け入れるためにも、オープンエントリー制の採用や「大学名不問」の採用方式を拡大すべきであるし、経験者採用や通年採用への移行も検討すべきであろう。また、複線型の人事・雇用システムを構築する観点からは、社内公募制の導入や専門職などの処遇制度の多様化を図っていく必要がある。人材育成を進めていくためには、こうした企業の自己改革こそが不可欠であり、経団連として会員企業に積極的な取組みを呼びかけていく必要があると考えている。

人材育成懇談会では、以上のような諸点を中心に年明けには提言を取りまとめ、公表の予定である。


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