輸送委員会(委員長 濱中 昭一郎氏)/12月1日

今後の港湾整備のあり方


港湾はわが国内外の物流を支える重要な基盤であるが、国の公共事業費に占める港湾関係予算のシェアは年々低下している。先の阪神・淡路大震災を契機として港湾整備の重要性が再認識されつつあるが、今後の港湾整備においては、限られた財源を活用して、いかに安く使いやすいものにしていくかが重要である。輸送委員会では運輸省の栢原港湾局長をはじめとする港湾局の幹部を招き、今後の港湾整備について説明を受けるとともに懇談した。

  1. 栢原局長説明要旨
    1. 運輸省港湾局では1985年に21世紀に向けた港湾整備の長期政策を策定した。その後、港湾を取り巻く状況が大きく変化したこともあり、今般新たに2010年を目標とする「大交流時代を支える港湾」と題する長期的港湾政策を策定した。今回の長期政策では、今後アジアが世界の産業の中核、物流活動の中心を担っていく中、国際港湾を拠点的、選択的に整備すべきと考えた。具体的には、わが国を代表する東京湾、伊勢湾、大阪湾、北部九州の中枢国際港湾において情報高度化にも対応した高規格な国際海上コンテナターミナルを整備するとともに、それを補完するため8地域の中核国際港湾において需要に応じターミナルを整備する方針を打ち出した。また今後厳しさを増す財政制約の下、投資を一層効率化する必要があるため、港湾の機能分担や施設の効率的な配置、投資の重点化を明記した。

    2. この長期政策に対応した最初の五箇年計画として「第9次港湾整備五箇年計画」(計画期間:1996年度〜2000年度、投資規模: 8兆3,000億円)を策定した。同計画では、
      1. 国際コンテナ港湾の競争力の強化、
      2. 地域の国際交流基盤の充実、
      3. 災害に強い港づくり、
      4. 廃棄物処理問題への対応、
      などを施策の重点に置いている。整備の際、投資効率化の観点から重要港湾等の防波堤改良工事等を抑制するとともに、地方港湾の整備実施港数を絞り、事業の集中化に努める。また空港、道路等他のインフラ整備と連携し、効率的な物流体系の形成を図る。

    3. 96年度の概算要求額でみると、港湾整備に必要な事業費は約1兆4,000億円であるが、国費の占める割合は4分の1に過ぎない。港湾は産業基盤であるというイメージが未だに強いが、港湾の果たす役割は生活環境基盤や国際交流基盤等に移ってきており、港湾整備に対するニーズは大きい。

  2. 経団連側発言要旨
    1. 港湾を整備する際、ユーザーや荷主のニーズを十分に把握し、ハード面のみならずソフト面もさらに充実させるべきである。

    2. 「わが国の港湾は既にアジアのハブではない」という認識の下、整備を促進すべきである。港湾を国民共通の資産と考え、純粋一般財源の投入を拡大すべきである。


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