消費者・生活者委員会(委員長 鈴木 敏文氏)/11月21日

規制緩和に対する消費者の意識


消費者・生活者委員会では、消費者・生活者の立場からみた規制緩和を検討している。その一環として主婦連合会(主婦連)の吉岡初子事務局長を招き、主婦連が昨年9月から今年3月にかけて実施した規制緩和に関する主婦の意識についてのアンケート調査結果、および規制緩和に関する諸問題についての意見を伺った。以下はその概要である。

鈴木敏文委員長

  1. 規制緩和に対する主婦の意識調査
  2. 主婦連では、主婦をはじめとする消費者が規制緩和についてどのような意識を持っているかを探るため、1000人の主婦連会員を対象にアンケート調査を行なった(回収率92.4%、以下各設問は複数回答)。
    回答者の8割以上が規制緩和に関心を持っていることが示された一方、規制緩和が消費者にとってメリットがあるかという質問に対しては、「メリットがあると思う」と答えた人が44.7%に対し、「どちらともいえない」と答えた人も44.8%と多かった。「どちらともいえない」と回答した人は、規制緩和によって、消費者利便が向上する一方、食品等の安全面における消費者の自己責任がいっそう重くなるなどのマイナス面があると考えているようである。
    規制を緩和してほしい項目としては化粧品・大衆薬(47.3%)、書籍・CDの再販制度(33.0%)、大店法(32.8%)をあげる人が多く、反対に規制を緩和してほしくない項目としては、食品・食品添加物の規格基準(66.6%)、農薬の取締り・規格基準(52.8%)、飲食店・食料品の衛生基準(51.0%)など安全・衛生に関わるものが多く指摘されている。
    規制緩和に対する評価としては、競争が活発になり価格が下がる(65.3%)、商品・サービスの種類が多くなり選択の幅が広がる(47.0%)と前向きに評価する意見がある一方で、食品等の安全面での不安が増える(59.0%)、効率の悪い中小企業が影響を受け、効率の良い大企業による価格支配が強まる恐れがある(37.2%)など否定的に評価する意見も多かった。
    また、規制緩和を進める上で必要な点として、商品の安全性・品質・機能・価格に関する情報提供を望む意見が多かった。

  3. 規制緩和をめぐる諸問題
    1. 金融自由化と預金者の自己責任
    2. 金融自由化により、預金者がより有利に、自由に金融機関を選ぶ時代が到来したと思っていたが、現状は銀行の預金金利はほとんど横並びのままで、預金者に選択の余地はない。また、従来は起こりえないと考えられていた金融機関の破綻も現実化しており、預金者が金融機関を選択する際の自己責任が重くなっている。以降5年程度でペイオフ(1,000万円までの預金の保証はするがそれ以上は預金者自らの責任になる)もありうるとされ、預金者が金融機関を正しく選択するための情報開示制度の整備がますます必要になっている。

    3. 大店法の緩和・撤廃に関する諸問題
    4. 大店法は段階的に緩和され、近い将来撤廃される見通しだと聞くが、大型店の出店が自由化されても、消費者にとってメリットは小さく、デメリットばかりが発生する可能性もある。例えば、現在大店法の規制対象になっている大型店の多くはロードサイド型の郊外店だが、規制が緩和されこのような大型店が増えても、車の運転ができない高齢者や障害者などの弱者はその利便を容易に享受することができない。また、大型店の出店には諸々の規制があるが、撤退には何の規制もない。大型店の進出により周辺の中小小売店が閉店に追い込まれた後で、その大型店が何らかの理由で撤退した場合、その地域の消費者は著しく不利益を被ることになる。

    5. 酒類の販売規制
    6. 酒類の自動販売機は、未成年者の飲酒問題につながる可能性があり撤廃すべきである。また、低アルコール飲料とノンアルコールの清涼飲料とを容易に見分けられるよう、メーカーはデザインや表示を工夫してほしい。また24時間酒類を販売するコンビニエンスストアでは、アルバイト店員が客を成年か未成年かチェックできるのかとの疑問もある。

    7. 製造年月日と賞味期限表示
    8. 従来、牛乳は製造年月日と賞味期限を併記してきたが、消費者に迎合した過度の鮮度競争を招くとの理由で牛乳メーカーの業界団体である全国飲用乳公正取引協議会(公取協)が賞味期限のみを表示の方針を打ち出した。
      消費者が本当に知りたいことは何なのかをよく考え、製造年月日と賞味期限を併記したい事業者には併記を認めるべきであろう。

    9. 製造物責任法(PL法)施行後の諸問題
      1. 裁判外紛争処理機関設置の必要性
        製造物責任に関して今後多くの紛争が予想される一方で、日本の裁判制度は多くの費用と時間を要するという問題がある。
        紛争を迅速に処理するために業界ごとに裁判外紛争処理機関を設置し、被害者からの相談を受け、当事者間で直接交渉をする体制を確立すべきである。

      2. 原因究明機関の設置
        PL法により消費者をすべて救済できるわけではない。クレーム品についての欠陥の立証は消費者側がしなければならない。
        中立的な立場で原因究明を行う第三者機関を設置することが求められる。

      3. 注意表示
        製造者がPL法を過剰に意識し、責任回避を図る余り、表示する必要がないと思われる細かい情報まで注意書きされる例が多くなっている。(例:傘について、駅のホームなど多数の人が集まる場所で傘を振り回さないこと、といった表示)
        その結果、商品に関して消費者が本当に必要としている情報が埋没してしまう危険性がある。


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