消費者・生活者委員会企画部会(部会長 立石 信雄氏)/11月15日

欧米にあって日本にない、または普及していないサービス・商品


消費者・生活者委員会企画部会では、消費者・生活者の視点からみた規制緩和の進め方に関する検討の一環として、日立総合計画研究所の吉成雅人研究員を招き、同研究所が今年3月にまとめたアンケート調査結果「欧米にあって日本にない、または普及していないサービス・商品」についての説明を受けた。
以下は、説明の要旨である。

  1. 欧米にあって日本にないサービス・商品についてのアンケート調査
  2. 日本は諸外国から規制が多い国だといわれる。欧米の駐在員からも、欧米では許可されているのに日本では認められていないサービス・商品が多いとの声をよく聞く。
    そこで、日立総合計画研究所では、消費者からみて生活上便利なサービス・商品の導入が日本では規制により阻まれているのではないかという問題意識のもとに、欧米の日本企業駐在員およびその家族を対象に昨年8月、アンケート調査を実施した。
    回答の約6割は米国から、残りはヨーロッパ諸国からが中心で、年齢別では30〜40代が多い。寄せられた回答をもとに、本年3月にアンケート結果をとりまとめ、欧米にあって日本にない、または普及していないサービス・商品120項目を抽出し整理した。

  3. 日本と欧米とのサービス・商品格差の原因
    1. 報告書では、まず、120項目について何故当該のサービス・商品が日本にはないのか、または普及していないのか、その原因を規制、社会・習慣、インフラ別に分類した。
      その結果わかったのは、当該のサービス・商品が日本にない理由は主として、社会・文化習慣やインフラ整備の違いによるもので、日本の規制によってその導入が阻まれている例はそれほど多くないということである。

    2. 日本の規制が原因で、日本にそのサービス・商品の導入がされていない案件としては、家庭用ディスポーザー(日本の地方自治体の条例)、多機能・移動型ATM(日本の銀行法)、CATV(日本の地元企業中心の行政指導)、セルフ・サービスのガソリン・スタンド(日本の消防法)、移動型遊園地(日本の建築基準法)などがある。
      主に日本と欧米諸国との社会・習慣の違いが原因である案件は、スーパーでの野菜・果物の量り売り(欧米のまとめ買いの習慣、自分で選択することを重視する社会)、セントラル・ヒーティング(欧米の家の広さ、電気代の安さ)、パーソナル・チェック(米国の現金を持ち歩かない習慣)、多様な障害者・高齢者への支援サービス(欧米の弱者へのサポート意識)などがある。
      主としてインフラの違いが原因である案件として、高速道路料金の安さ(税金やコスト負担方法の違い)、ドライブ・スルーの充実(米国は車社会であること、自動車保有台数の違い)等があげられている。

  4. 欧米にあって日本にない、または普及していない優れたサービス・商品
  5. 消費者・生活者の視点からみて優れたサービス・商品としてアンケートで指摘の多かった案件について、米国を中心にその概要を紹介する。

    (1)パーソナル・チェック(個人小切手)とクレジット・カードの普及
    米国では、銀行の信頼性が低く自動引き落としによる公共料金の支払いはほとんど行われていない。そのため公共料金の支払いやクレジットの支払い、通信販売の支払いなどに、広くパーソナル・チェックが利用されている。
    また、一般に現金を持ちあるく習慣がないことから、少額のガソリン・スタンド、スーパーの支払いなどでも広くクレジット・カードを利用出来る。

    (2)セルフ・サービスのガソリン・スタンド
    米国ではガソリン・スタンドの9割近くがセルフ・サービスになっている。日本で米国並にセルフ・サービス化を実施すると、ガソリン価格は最大1r当たり19.6円安くなるという試算もある。
    日本では消防法でセルフ・サービスは規制されているが、実際にセルフ給油を利用した人の意見では、危険を感じたことはほとんどないという。

    (3)書籍のディスカウント販売
    米国の大手書店の例をあげると、『ニューヨークタイムズ』紙のベスト・セラー・リストにある書籍は30%引きになるなど、全ての書籍がディスカウント販売されている。これに対し日本では、再販売価格維持制度により書籍のディスカウント販売は行われていない。

    (4)多様な郵便局のサービス
    米国の郵便局は、国民のニーズに対応したさまざまなサービスを提供している。例えば郵便局でパスポートの申請や選挙権行使のための登録用紙の配付を行なっているほか、切手の通信販売なども受け付けている。また郵便料金も日本の半分以下である。

    (5)スーパーでの野菜・果物の量り売り
    米国のスーパーでは、日本のようにパック化され画一化された商品を置くだけでなく、野菜・果物類を量り売りしており、消費者は好きなものを好きな量だけ買うことができる。このシステムは、自分の欲しい量だけを買えるので無駄がない、包装などで資源を節約出来るなどの点で消費者に好評である。

  6. 日本の消費者の精神面での成熟も必要
  7. 欧米の商品・サービスの特徴は、第1に、幅広い選択肢があること、第2にリスクのユーザー負担が徹底しており、安全や保証は買うものという意識が浸透していること、第3に、サービス・商品の提供に際しては供給者、企業優先ではなく消費者優先であることである。
    日本では問題が起きないようあらかじめ規制するが、欧米ではなるべく規制はせず、選択肢は広くしておく代わりに、消費者は自己の選択の結果について責任をとるという原則が徹底している。今後、日本が規制の緩和・撤廃を進め欧米にあるサービス・商品の導入を図っていくためには、日本の消費者の精神面での成熟も必要だろう。


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