競争政策委員会(委員長 弓倉礼一氏)/11月24日

改定「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」につき公正取引委員会が説明


新ガイドラインの原案は本年4月3日に公表され、競争政策委員会では早速説明会を開催(『経団連くりっぷ』8号参照)するとともに、5月17日、原案に対する意見を公正取引委員会(公取委)に対して提出した。公取委は、経団連を含む各団体や外国政府からの意見を踏まえて改定作業を進め、10月30日に最終的なガイドラインを公表した。そこで、競争政策委員会は公取委より経済部団体課長岩本章吾氏を招いて、標記説明会を開催した。
以下は岩本課長の説明の概要である。

  1. ガイドライン改定の経緯
  2. 1979年8月に、旧事業者団体ガイドラインが策定・公表されて以来の社会・経済環境の著しい変化に伴い、旧ガイドライン策定当時には予想されていなかった独禁法に関わる新たな問題が生じてきた。また、事業者団体が各業界で占める地位や果たしている役割も変質してきている。独禁法違反事件の3分の1以上は事業者団体によるものであることから、独禁法違反の未然防止を図る必要性も高じている。
    95年4月3日に改定原案が公表された後、経団連を始めとする国内の関連機関、省庁、米国政府やEUからのべ 300項目に及ぶ意見が寄せられた。これらを受けてより理解しやすく修正を加えたが、基本的な骨格に変更はない。

  3. 旧ガイドラインからの主な改定点
  4. (1)公的規制・行政に関連する行為について
    規制緩和の進展に伴い、事業者に対する公的規制や独禁法の適用除外が次第に減少し、事業者間の自由な競争が回復することが期待されるが、一方、事業者団体がそれまでの公的規制に代わって事業者の事業活動を制限することは独禁法上問題となる。また、行政機関からの業務の委託や行政指導を受けた事業者団体の行為によって、事業者間の競争が制限されたり、差別的取扱いが行われてはならない。新ガイドラインは、次のような行為類型を列挙し、独禁法上の問題点について指摘している。
    1. 許認可・届出等に関連する制限行為、
    2. 公的規制分野において規制されていない事項に係る制限行為、
    3. 公的業務の委託等に関連する行為、
    4. 行政指導により誘発された行為、
    5. 入札談合、
    6. 国・地方公共団体等に対する要望または意見の表明

    (2)参入制限行為
    事業者団体は、その構成事業者の市場シェアの合計が大きいものが多いことや加入した者が各種のメリットを受けることができることなどから、場合によっては、事業者団体の活動が事業者の新規参入を制限したり、特定の事業者を排除することにつながりかねない。
    例えば、非構成事業者に対する商品や役務の供給制限や、それらの業者が供給する商品や役務の取扱い制限、または、団体に加入しなければ事業活動を行うことが困難である場合の、団体への不当な加入制限や除名等の行為が独禁法上問題となりうる。

    (3)自主規制
    事業者団体が、環境の保全、安全の確保、消費者の利便の向上等の種々の目的に基づいて、商品の種類、品質や表示・広告、営業方法等に関して、自主規制や自主基準の作成等の活動を行う場合が多くなっている。これらは、いずれも事業者間の重要な競争手段に関するものであり、事業者団体がこれらに関して自主規制を行ったり、自主認証・自主規格認定を定めたりすることによって、競争が阻害される可能性がある。
    自主規制等の競争阻害性は、
    1. 競争手段を制限し、需要者の利益を不当に害するものではないか、
    2. 事業者間で不当に差別的ではないか、の判断基準に照らし、
    3. 社会公共的な目的等正当な目的に基づいて合理的に必要とされる範囲内のものか、
    の要素を勘案しつつ判断される。
    また、自主規制等の遵守・利用については、構成事業者の任意の判断に委ねられるべきであって、事業者団体がそれを強制することは許されない。同時に、自主認証・認定等を受けなければ事業活動が困難になる状況において、構成事業者であるか非構成事業者であるかを問わず、その利用を正当な理由なく制限することも独禁法上問題となるおそれがある。


1979年度〜1994年度 (16年間) の審決状況

全審決数           271件
うち事業者団体が関与したもの  96件 (35.4%)
そのうち公的規制や行政関連は  51件 (団体事件中53.1%)
(内訳は入札談合32件、公的業務の委託関係 9件、許認可関係 5件)
    

主要団体に対する実態調査(抜粋)

〔92年9月.公正取引委員会事務局〕

●構成事業者の合計シェア別団体数(回答団体数821)
・シェア90〜100%  267団体 (32.5%)
・シェア75〜100%  446団体 (54.3%)
・シェア50〜100%  584団体 (71.1%)
        
●団体に加入するメリット(回答団体数844.複数回答)
・同業者、取引先等関係業界の情報が入手しやすい  7.6%
・行政庁からの情報が入りやすくなる       72.4%
・社会的信用が増す               61.3%
・行政庁に対する申請等がスムーズになる     29.4%
        
●団体の行っている事業(自主規制等に該当するものにつき抜粋)(回答団体数844.複数回答)
・公的規格作成に関する協力、原案作成      41.6%
・営業の種類、内容、方法等に関する自主基準
 (倫理綱領、商慣行・取引条件、モデル約款、
  広告、サービス内容等)の作成        25.2%
・団体独自の製品規格の設定           13.2%
・公的規格に関する検査・認証           5.8%
・団体独自の製品規格に関する検査・認証      5.1%
        

外国企業に対する実態調査(抜粋)

〔92年9月.公正取引委員会事務局〕

●団体に加入しない場合の事業上の不利の程度(回答企業数225)
・特段の影響はない                58.7%
・多少不利になるが事業に支障はない        26.2%
・かなり不利になり、事業が困難である        8.9%
・事業は事実上不可能になる             5.3%
        
●団体に加入していない企業の不加入の理由(回答企業数97)
・加入の必要を感じない/
 加入することのデメリットが大きい        68.4%
・団体があることを知らなかった          22.4%
・加入を拒否された又は加入したくとも加入できない  9.2%
        

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