東亜経済人会議日本委員会(委員長 服部 禮次郎氏)/11月27日

第23回東亜経済人会議に向けて日本側代表団結団式を開催


東亜経済人会議日本委員会では、日台国交断絶後の1973年以来、台湾の経済人との間で毎年東亜経済人会議を開催している。本年は、台北で第23回会議を12月6〜8日に開催するが、同会議に向けて日本側代表団の結団式を開催した。
当日は、参加者による打合せに先立ち、筑波大学社会科学系の井尻秀憲助教授より、最近の台湾情勢と今後の中台・日台関係について説明を聞いた。以下は井尻助教授の説明の概要である。

  1. 今、「台湾問題」は新たな意味を持って浮上している。台湾の民主化が進展し、世界から注目を浴びるとともに、中国に対してもその成果を発信し始めたからである。中国の長い伝統を引き継ぐ台湾が、西側の議会制民主主義を導入しつつあることは、世界史的な意味を持つ。また、新しい「台湾問題」を作り出したもうひとつの要素は、李登輝総統が実施してきた現実外交である。面子よりも実質を重んずるこの政策には限界はあるものの、台湾の国際的認知度の向上に大きく貢献した。これによって非公式のネットワークが構築されつつあり、台湾の一層の外交展開が今後可能となろう。

  2. 台湾の民主化はM経国政権の末期から、平和的なプロセスによって進められてきた。李登輝政権下の92年立法院(国会に相当)選挙では、万年議員を引退させ、全面改選を果たした。昨年の台北市長選挙では、野党候補が台北市長に当選した。来年の総統選挙は民主化の最後の仕上げとなるが、野党にどれだけの支持が集まるかが焦点となるだろう。特に都市部の若い世代には野党支持者が多く、その動向が注目される。ただ、現時点では国民党の李登輝・連戦の優位は揺るがないと思う。住民投票による民選大統領が誕生すれば、その意味合いは大きい。

  3. 中台関係の分析を難しくさせているのは、双方は政治的には反発しながらも、経済面では結びつきを強めていることだ。今回の総統選挙に対しても、中国は台湾近海で大規模な軍事演習を繰り返し、メディアで李登輝批判を繰り広げるなど、文武両方から台湾にプレッシャーをかけている。しかし、長い目で見れば、中台は今後、政治対話を進めていかなければならないだろう。来年の総統選挙は、中台関係にとってある意味で一つの分水嶺となるだろう。選挙が終われば、現在中断されている民間のトップ会談が再開される可能性もある。

  4. 日台関係は基本的に拡大均衡であるべきだ。日本政府は中国とのバランスを強調するが、そのような説明では台湾側には到底納得してもらえない。特に、今後台湾において親日的世代が引退し、欧米留学組を中心とする若い世代が指導者層を占める時に、日台関係がどうなるかが問題だ。


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