資源・エネルギー対策委員会基本政策部会(部会長 大澤秀次郎氏)/11月20日

アジアを中心としたエネルギーの世界需給見通し


IEA事務局次長のジョン・フェリター氏が、わが国エネルギー関連諸機関への訪問のため来日したのを機会に、同氏を招き今後のエネルギー見通しとIEAの役割等について懇談した。フェリター氏は「エネルギーの需給は安定しているが、需要が急増する非OECD諸国との関係強化に努めたい。」などと発言した。

  1. フェリター氏説明概要
    1. エネルギー安全保障
    2. エネルギー安全保障のポイントは3つある。(緊急時への対応、環境への配慮、需要急増諸国における安全保障対策。)

    3. 石油について
    4. 石油需要は、現在7000万バーレル/日だが、2010年には9000万バーレル/日に増える。地域別にはアジア、部門別には輸送の伸びが大きい。アジア等の石油輸入依存度の高い国は、供給不安定性に対し、保険をかけておく必要がある。OPEC産原油への需要も現在の2700万バーレル/日から、2010年には4700万バーレル/日に増える見通しである。

    5. CO2排出量の増加と経済成長
    6. CO2の地球温暖化への影響が懸念されている。非OECD諸国、特に中国を中心としてCO2の排出量が増加している。我々は、排出量を抑制しようとすれば経済成長を犠牲にしなければならないという難しい問題を抱えている。

    7. 一次エネルギー需要
    8. 今日の一次エネルギーの90%は化石燃料だが、そのシェアーは2010年でも変わらない。一次エネルギー需要は非OECD諸国で増えている。固体燃料需要については、中国・アジアを中心とした途上国で倍増する。電力も中国を中心とした途上国で需要が増えており、2010年迄に現在の米国と同じ730GWの発電設備が必要となる。

    9. 2つの懸念とその対応
    10. エネルギー需給は当面安定していると見られているが、懸念事項が2つある。1つは、中東依存度の増大であり、もう1つは、需要が非OECD諸国で増えていることである。前者については、IEAの備蓄への配慮が重要である。後者については、備蓄体制を整備していないため国際協力の維持・拡大が必要である。その意味でIEAは依然役割を失っていない、と考える。

  2. 懇談
  3. 経団連側:
    中国の数値はどうやって出しているのか。
    フェリター氏:
    現在の数値はIEAと中国側の協力で出された最善の推定値であり、将来的にはさらに改善していきたい。

    経団連側:
    中国の電力需要急増に伴う、急激な発電設備の建設は可能なのか。
    フェリター氏:
    中国が、海外の投資家に魅力的な投資環境を整備できるかどうかに、かかっている。

    経団連側:
    原油需要急増に見合う精製設備の建設は可能か。
    フェリター氏:
    原油の供給面では問題はないが、投資環境が設けられるように、IEAで要請していく。

    経団連側:
    石油の需給見通しにオイルサンド・オイルシェルは入っているのか。
    フェリター氏:
    それらが入ってくる程石油の値段は上がらないため、入っていない。

    経団連側:
    日本の省エネ政策の評価を聞きたい。原子力発電についてIEA加盟国で意見が分れているが、もっと踏み込んだ議論が必要ではないのか。
    フェリター氏:
    どちらも難しい問題。前者については、効率改善について技術面で推進してきたが、価格面では改善率の伸びが鈍化している。改善のため規制を導入することは、規制緩和の時代に反する。後者については、93年に加盟国大臣が合意した「IEA共通目標」において原子力はエネルギー安保に貢献するという事と、原子力発電を有する国では高水準の安全基準が設けられており、温室効果ガス削減に貢献することを説いている。

    経団連側:
    2010年のOPEC原油に対する需要増に対する供給は可能か。
    フェリター氏:
    可能だが、外資への門戸開放の進展具合によるだろう。石油のマーケットの上流・下流での再統合、OPEC諸国の外資の導入という現在の歓迎すべきトレンドは続いていくと思う。


最近のIEAの活動状況

  1. エネルギー安全保障の維持・強化

  2. 非加盟国への対応

  3. 地球環境問題への対応

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