APEC大阪会議に関する説明会(座長 末松アジア委員長)/12月4日

APEC大阪会議でアジア太平洋地域の自由化が本格化


11月16〜19日に大阪で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の非公式首脳・閣僚会議の模様と、この会議で採択された「大阪行動指針」の概要について、瀬木APEC担当大使と通産省の今野経済協力部長より説明を聞いた。瀬木大使、今野部長より、APECにおける自由化は、民間の参画なしには達成できないので、今後も民間経済界がAPEC推進の原動力になってほしいとのとの要望が寄せられ、活発な意見交換を行なった。

  1. 瀬木APEC担当大使説明要旨
    1. APEC大阪会議は、3つの点で意義があり、大成功したと評価できる。第1は、60年代にまで遡るアジア・太平洋地域協力の終着点となる成果(「大阪行動指針」、「大阪宣言」等)を出したこと、第2は、域内の貿易・投資の自由化に向けた第一歩を踏み出したこと、そして第3は、日本がそのためにリーダーシップを発揮し、期待に応えたことである。

    2. APEC地域の領域は広く、構成メンバーは政治体制、民族、宗教、経済の発展段階等の面で多様であり、しかも欧州や北米のように制度や条約による統合を目指していない。APECにおける自由化は協調的かつ自主的な方式をとり、この地域のダイナミズムを利用しつつ、それを促進する方向で進めることになった。ASEANや中国で現在行われている個別の自主的な自由化措置をベースとしつつ、同時に、その限界を乗り越えるために、外圧あるいはガイドラインとして、税関手続き、基準認証等貿易・投資の「円滑化」を中心に、協調的なアプローチ(共同行動)を導入していく。

    3. 大阪会議で最後まで争点になったのは次の3つの問題である。第1は「包括性」の問題。APECにおける自由化の対象は全分野であるが、自由化にあたって、一部の分野を他の分野と違う扱いにできるか否かで意見が分かれた。最終的には、柔軟な対応を認めることになった。
      第2に、メンバー間の自由化の度合いをどの程度同じにするかという「同等性」が議論され、互いの取り組みを尊重しつつ、各自の責任で自由化を進めることになった。
      第3は、メンバー同士が各々の自由化の成果を「無差別」に適用し合うか否かについて、米中が対立した。この背景には、米国が議会との関係で、中国へのMFN(最恵国待遇)供与を毎年更新している事情があったが、米国は、努力目標が示されたとして妥協し、問題が解決した。

    4. 今後の課題は、日本のイニシアチブでまとまった「大阪行動指針」というルール・ブックに基づいて、来年のマニラ会議までに各メンバーが「行動計画」を策定し、実際にゲームを始めることである。日本は率先して意欲的な計画を示さねばならず、そこに盛り込むべき内容について、民間経済界からの提言を是非ともお願いする。

  2. 今野経済協力部長説明要旨
    1. APECにおける経済・技術協力が大阪会議で確認された。すなわちAPECは援助機関ではなく、援助よりも各国の政策発展を話し合うことに重点を置く。メンバーはイコール・パートナーとして、分野毎の「共通政策理念」を定め、「共同行動」と「政策対話」により、その実現を図る。

    2. APECの経済・技術協力には2つのタイプがある。人材育成をはじめとする開発協力(途上メンバーを対象とする協力)と、環境、エネルギー等、地域的な課題への全メンバーの取組みである。具体的な案件としては、将来の域内のエネルギー需給を把握し、エネルギー政策に反映させる「APEC域内エネルギー見通し」の策定、域内のビジネス専門家の自主的な派遣メカニズムである「APECビジネス・ボランティア・プログラム」の実施、中小企業振興のための「APEC中小企業技術交流訓練センター」の設置等を「共同行動」に盛り込んだ。

    3. APECには強制力を発揮する条約等は存在しない。その代わりに、首脳会議がAPECを推進するエンジンとして機能している。今回で3回目の首脳会議になるが、ようやく定着した感があり、これも大阪会議の成果のひとつと言えよう。

    4. APECにおける自由化は、伝統的な自由化の枠を越え、各メンバーに抜本的な経済改革を行うことを求めている。日本は来年のマニラ会議に向けて、規制緩和をはじめ一大改革を断行しなければならない。国内改革とAPEC全体の自由化の双方のプロセスを有機的に結合させ、双方の成果をフィードバックさせ合う仕組みが求められており、日本の経済界にも是非とも知恵を出していただきたい。

  3. 懇 談
  4. 経団連側:
    昨年のインドネシア会議と大阪会議の違いは何か。
    日本政府側:
    インドネシア会議はトップ・ダウン、大阪会議はボトム・アップが特徴。ボゴール宣言は政治的な決断なくしては実現しなかったし、それ故に歴史的な意義がある。大阪会議はその成果を具体化するために事務レベルで積み上げ、成果を出した。

    経団連側:
    日本政府はAPEC中央基金に100 億円を拠出するとのことだが、具体的な内容を知りたい。従来の二国間の援助との関係はどうか。
    日本政府側:
    日本の対アジア経済援助は、バイ、マルチさまざまなツールを用いて実施している。この100 億円は、今後数年間で、APECにおける自由化・円滑化に資する目的、例えば、特許関連の人材育成等に限定して使われる。詳細は未定である。

    経団連側:
    APECビジネス諮問委員会の詳細を伺いたい。
    日本政府側:
    まだ具体的なことは何も決まっていない。

    経団連側:
    来年のマニラ会議の目玉は何か。
    日本政府側:
    第1に、「大阪行動指針」に基づき、各メンバーが「行動計画」を策定し、持ち寄ること。第2には、人材育成、中小企業、持続的な成長に関する3つの大臣会合が開催されること。とくに人材育成は大きなテーマになろう。


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