ファン・チ・ラン専務理事
計画経済のときには存在しなかった民間部門は現在GDPの54%にまで成長した。雇用の7割を占める農業分野では98%が民間である。重工業やインフラ関連分野では40%を民間が占め、貿易の75%も民間によるものである。ベトナム政府も国営企業の民営化に重点を置いている。96年〜2000年の新経済計画のもとで工業化と近代化をさらに進め、2000年にはGDPを91年の2倍にする目標を掲げている。90年の時点では、GDPの2倍に引き上げることを目標にしていたが、このほど、1人当たりGDPを2倍にすると修正した。
ASEAN加盟の後、ベトナムはAPEC、WTOへの参加も検討しており、他のASEAN諸国の支持も得ている。AFTAの一員としてCEPT(共通効果特恵関税制度)プログラムに則り、96年1月以降、関税を順次引き下げ、他国に3年遅れて2006年に自由化を達成する予定である。
また今国会ではベトナム史上初の民法が可決され、96年7月1日から施行されることとなった。商業上の権利や保護、当局との係争発生の場合の手続きなども規定されている。世界の法律の専門家からは、「ベトナムの民法は高度な内容を持つものであり、国際的な基準も満たしている」との評価を得ている。
日本企業は一般的に用心深く、意思決定に時間を要する。リスクを考えてのことだろうが、ビジネスにはリスクは付き物であり、長期的にみればリスクを補って余りある見返りがあるものと思う。円高に伴い海外進出を考える日本企業にとって、ベトナムは有望な進出先である。かつてベトナムのイメージは暗かった。しかし、ASEAN加盟によりベトナムは4億人の市場に隣接し、またメコン川総合開発も計画されていることから、その将来は明るい。
米国企業もベトナムに興味を示しているが、文化の違いが大きく、相互の理解は不足している。日本とは文化的にも近く、相互理解も進みやすい。米国市場で活発に事業展開している日本企業に、ベトナムと米国との架け橋になってもらいたい。ベトナム経済の発展に日本は大きな役割を果たしてきた。今後も日本の協力を期待したい。
国営企業の数は3年前は12,000社であったが、現在は 6,000社にまで減っている。このうち利益を上げているのは3割程度で民間部門に比べ利益率が低い。国営企業の株式化(民営化)については2〜3年前から話題になっているが、民営化した企業は3社だけである。キエト首相は将来、国営企業は一握りの数になると述べたが、民営化を進めるには法体系の整備、特に会計監査制度の改善が必要である。国営企業は民間企業との協力も進めている。
ベトナムでは、土地は高価な資産であり、今回公布された民法も土地に関する規定を置いている。土地の所有権は国に属しているが、国営企業が土地使用権を取得すれば、商業目的に使用できるし、使用権の譲渡も可能である。土地使用権を担保に融資も受けられる。使用権取得の手続きも簡素化された。