なびげーたー

近くて遠い北朝鮮をより近い国に

アジア部長 角田 博


11月初旬ある経済ミッションの一員として北朝鮮を訪問した。北朝鮮は経済活性化の面で日本に大きな期待を寄せている。

わが国は北朝鮮とは国交がないので、まず北京に行き、北朝鮮大使館でビザを取る。北京から平壌へ行く飛行機は高麗航空が週に2便あるだけだ。平壌の街は朝鮮戦争で完全に破壊され、その後計画的に開発されたために、道路は広く、立派な建物、15万人収容というスタジアム、各種体育館、巨大なモニュメント、高層アパートが立ち並んで、整然としている。大同江の側を走る高速道路、普通江岸の遊歩道、美しいの一言につきる。

車や自転車は少なく、静かではあるが、騒々しい東南アジアの街に慣れている目からすると、若干寂しい。地下鉄や路面電車は新しいが、数少ないトラックやバスは極めて古く、黒い煙をまき散らして走っている。冬に入る備えでどのトラックもキムチ用の白菜を満載していた。

われわれは当地で経済政策の説明を聞くとともに、朝鮮国際貿易促進委員会のアレンジで、南浦港、製鋼所、工作機械工場、繊維製品や製糸の工場などを見学した。各工場とも広大な敷地を有しているが、概して設備は古く、稼働率も極めて低い。繊維製品の委託加工をしている工場では、JUKIのミシンも入り、数百人の女工さんの手で、日本や中南米向けの製品を造っていたが、それでも生産能力は大幅に余っている。

孔鎮泰(コン・ジンテ)対外経済担当副総理をはじめとする政府高官の話は、「共和国は昨年金日成主席に先立たれるという不幸に直面したが、金正日将軍の周りに団結して国の発展に努力している。共産圏諸国の崩壊による困難から脱却するため、農業、軽工業、貿易第一主義をとることにし、羅津・先鋒自由経済貿易地帯の建設を進めている。これら地域への日本企業の投資を求めたい。」とのことであった。「自由経済貿易地帯のために既に24の法律や細則を定めており、税制上の優遇措置も用意している。さらに委託加工もより一層推進したいので、日本で説明会を開きたい」と言う。

また、貿易保険が受けられない、特恵関税も適用されない、朝日間の輸出入が規制されている、等の不満が表明された。

経団連に対する期待は大きく、こうした差別待遇の是正を図るとともに、協力促進を働きかけてほしいと言われた。

国交が正常化していないし、累積債務の解決が遅れていることから、思うように両国の経済関係を推進できないことは事実である。しかし、北朝鮮はまさに近くて遠い国であり、まず人的な交流で相互理解を促進し、経済面の協力を少しずつでも進めることが、両国関係全体の改善に資することになる。アジアの安定的な発展のためにもう少し前向きの努力が必要ではないか。


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