九州経済は足踏み状態が続いている。この不況は循環的要因でなく、構造的な要因によるところが大きい。九州経済界として、自立的な経済圏の形成に向け種々努力している。
現在、
九州の景気は依然として足踏み状態にある。95年9月現在の鉱工業生産指数は、106.4 であり、全国平均の93.0よりは高い水準にあるものの、景気回復の状況は一進一退である。完全失業率も円高不況以来の高水準となっており、雇用情勢の一層の悪化が懸念されている。会員アンケートによると、景気の本格的な回復は、96年夏以降であるとの見方が大宗を占め、先行きに対する見通しは厳しいものとなっている。
今後の経済対策として、規制緩和と行政改革の徹底に加え、所得税減税の継続、地価税の見直し等の土地対策、不良債権問題の早期解決、為替レートの安定などが望まれる。
九経連の進める重要プロジェクトとして、九州国立博物館の誘致ならびに航空宇宙産業の振興があり、政府に対し予算措置の拡大を求めている。
規制緩和においてまず重要なのは、政府の規制緩和推進計画の着実な実行を図るため監視体制を強化することである。第2は、目的の明確化、事前・事後評価の実施などを通じて、国民、とりわけ地域の住民にわかりやすく説明し、幅広い支持をとりつけることである。第3は、新産業・新事業創出を促すことである。とりわけ、アジア諸国との共生を目指した地域産業の育成・強化が必要であり、そのための規制緩和に取り組むべきである。第4は、規制緩和の中期的な推進体制として、恒常的な機関の設置や規制緩和推進法(仮称)の制定を検討することである。
一方、地方分権については、広域交流圏の実現のためにも地方行財政システムの確立が不可欠であり、規制緩和と一体的に進める必要がある。
国土審議会の「新しい全総計画の基本的考え方」において注目されるのは、
「世界の成長センター」と呼ばれるアジア諸国との交流を深め、そのエネルギーを活用して地域内循環を拡大することが、地域浮揚の鍵である。九州は、四全総のなかでも「アジア太平洋地域との地理的近接性と交流の実績を活かした南の国際交流拠点」と位置づけられ、五全総でも「アジアとの交流拠点」としての地域形成が求められると思われる。
九州とアジアとの交流は、人、もの、資本、情報等の様々な面でますます拡大し、深まりを見せており、同地域との貿易額、渡航者数等は全国平均を上回っている。
アジア諸国との交流の促進に向けて九州国際空港の実現に取り組んでいる。候補地の1本化に向けた第三者機関を年内にも設置し、1年程度の間に調査結果をまとめる計画である。また国際競争力のある拠点港および航路の整備を進め、アジア諸国との交易拡大を図るとともに、アジアに関する情報・研究機関のネットワーク化を図るなど、ハード面での課題と並行してソフト面にも力を入れていきたい。